こんにちは、四谷学院の生田です。
秋も深まるこの季節。
運動会や遠足、発表会と、園や学校での行事が続く時期ですね。子どもたちが楽しんで参加できるようにと、先生方も色々な工夫を凝らされていることかと思います。
一方で、発達障害のあるお子さんを指導する先生方から
「なかなか練習に参加できない」
「去年は舞台で固まってしまった。今年はどうなるか心配」
「全体の進行が遅れないようするのが大変」
というお悩みをいただくことがあります。
そのお気持ち、本当によく分かります。
一人ひとりのニーズに合わせたサポートをすることが、クラス全体にとってプラスになると頭では分かっていても、実際に現場で実践するのは大変なことですよね。
そこで、今回の記事では、発達障害のあるお子さんが園や学校行事に上手に参加するためのヒントをご紹介しています。
同じお悩みをもたれている指導者の方は、ぜひ参考になさってくださいね。
目次
苦手の原因は?
学校行事やその練習に参加するのをいやがる原因は、子どもによって様々です。まずは子どもの様子をよく観察し、「何が苦手か」を明らかにすることが大切です。
ここでは、4つのよくある原因とその対処法を考えていきます。
1.感覚過敏の傾向がある
大人でも、お化け屋敷のような暗いところが苦手な人、高いところが苦手な人など、状況への得意・不得意がありますよね。苦手な場所にはできるだけ近寄りたくない、踏み込みたくないと感じる人が大半ではないでしょうか。
子どもたちも同様です。
発達障害のある子どもは、大人やほかの子どもよりも環境への許容範囲が狭いと言われています。さらに、感覚過敏の傾向が強いと、人の話し声や競技のBGM、直射日光などが耐えられない、というケースも珍しくありません。
刺激を減らすサポートを行う
感覚過敏の傾向があるお子さんの場合、なるべく苦手なものから距離を置けるように、刺激を減らすサポートを行うことが大切です。
先生の話を聞く時以外はイヤーマフを付ける
■「光」に敏感な場合
屋外ではサングラスやつばの広い帽子を着用、室内では直射日光の当たる場所を避ける
サポートグッズを状況に応じて上手に取り入れることで、無理なく、スムーズに活動に参加しやすくなることが期待できますよ。
2.先が見えないことに不安を感じる
たとえば、あなたが電車に乗ってどこかへ行く途中、突然のトラブルで電車が止まってしまったとします。
この時、車内に何のお知らせもなかったとしたら、どうでしょうか。この先どうなるのか、どうすればいいのか、不安や苛立ちを感じませんか?
一方で、「5分後に運転を再開する」といった車内放送が一言でも流されると、はるかに落ち着いて残りの時間をやり過ごせるのではないでしょうか。
園や学校行事に参加する子どもたちにも同じことが言えます。
子どもたちにとって「初めて」の行事やその練習は、発達障害の有無にかかわらず、大きな不安を感じるものです。
そこで、いつ・どこで・誰と・何をするか、という見通しを立てることが重要になります。ここでは、2つの見通しの立て方についてご紹介をします。
過去の動画を見せる
園や学校行事は、例年、同じ場所で、同じように進行することが多いですよね。
そこで、過去の行事の様子を撮影した動画を見せることが効果的なことがあります。実際の映像を見てもらうことで、全体の流れを把握できるようになるほか、当日の様子もイメージしやすくなるからです。
ただし、何度も繰り返し見せるうちに、「自分も同じようにしなければならない」「できなかったらどうしよう」とプレッシャーに感じてしまう子どももいます。
そのため、「見本」として見せるのではなく、「今年はこれを歌うんだよ、楽しみだね」「ここの台詞かっこいいよね~」という風に、あくまでも、子どもが前向きな気持ちで取り組めるような声かけをすることが大切です。
実際に体験をしてみる
リハーサルは、見通しをもてるようにするためには欠かせない事前準備です。
リハーサルといっても、当日の流れを完璧にこなすことが目的ではありません。
実際に現地に行ってみたり、衣装を着てみたりと、「当日にやることを体験しておく」というのが重要です。この体験によって、見通しを立てることができるほか、先に挙げた感覚過敏の傾向があるなど、予想していなかった思わぬ「苦手」が発見されるかもしれません。
そうすると事前に対策ができるので、全体での練習や本番当日も、円滑に活動を進行できるようになることが期待されます。
3.活動内容が難しすぎる
お子さんが行事ごとへの参加を嫌がる場合、運動会や発表会で行う活動の内容が、そもそもその子にとっては難しすぎるといったことも考えられます。
「立ってただ歌うだけなら良いけれど、振り付けはどうしてもマネできない」
「徒競走ならいいけど、リレーのバトンはうまく渡せない」
など、子どもによって苦手なことは異なります。
視覚支援をする
楽器演奏を例にとって、サポートの一例を考えてみましょう。
楽器演奏の「2大苦手意識」は、
・楽譜が読めない
・運指ができない
この2つです。
これらを、子どもにとってわかりやすい形で提示することが支援の方針となります。
・楽譜の音符の上に「ドレミ」を書き込む
・演奏しやすいメロディーにアレンジする
発達障害のあるお子さんの多くは、耳で聴くよりも目で見て理解する方が得意と言われていますから、視覚支援を積極的に取り入れつつ、子どものレベルに合わせて難易度を調整できるといいでしょう。
4.緊張や不安を感じやすい
「家では活き活きとダンスの振りを見せてくれたのに、学校だとうまくできないみたいなんです…」
保護者の方からこんな相談を受けたことのある先生はいませんか?
緊張や不安を感じやすい子どもの場合、大人やほかの子どもに「見られる」ことをプレッシャーに感じて、その場から動けなくなってしまうことがあります。また、過去の「失敗体験」から、過度に緊張してしまい、身動きが取れなくなってしまっている可能性も考えられます。
安心感を与える
不安を感じやすい子どもには、リラックスして活動に取り組めるように配慮することが大切です。
(例)舞台袖の近く・入退場のゲートの近く
・活動中も隣に担当の先生についてもらう
・仲良しのお友だちとペアにする
この時、指導者は「参加できたことを評価する」という姿勢を心がけることが重要です。ダンスの振りを覚えていたか、指示通りに動けたかなど、「正しいやり方」を評価してしまうと、「次、うまくできなかったらどうしよう」という不安が助長されかねません。
そのため、たとえ途中で辞退してしまったとしても、「皆のこと、応援できたね」「入場行進のところ、かっこよかったよ」というように、「できたこと」に目を向けて、成功体験を積み重ねられるようにしましょう。
まとめ:発達障害児が学校行事や園行事に参加しやすくなるヒント
今回は、園や学校行事に参加できないよくある原因と、そのサポート例をいくつかご紹介しました。
指導者として、子どもの成長を願って「色々なことができるようになってほしい」と思われるのは当然のことです。その結果、周りの子どもと比べてしまうこともあるかもしれませんね。
もちろん、正しいやり方でできるようにすることも大切ですが、それ以上に大切なのは子どもが楽しんで活動に参加できるようになることです。
支援法は1つではありませんから、「今、この子は楽しめていないな」と感じるのであれば、柔軟に対応を変えてみるといいでしょう。場合によっては、無理せず、行事をお休みした方がいいこともあるかもしれません。
もしもお子さんの成長を誰かと比べそうになった時は、周囲のお友達とではなく、「去年の・1ヶ月前の・昨日のその子自身」と比較してみてください。
きっと、「できること」は増えているはずですよ。
四谷学院の発達障害児支援士資格認定講座は、実際の指導の現場で必要とされる専門的な知識を網羅しています。
・活動参加への促し方
・運動発達・操作性について
・勝負へのこだわりが強すぎる場合
さらに、支援のポイントや目的を踏まえながら対応例を学べるカリキュラムになっているので、場当たり的な指導ではなく、明確な根拠をもって指導にあたれるようになりますよ。
発達障害児支援士資格認定講座についての詳細は、HPをご覧ください。
このブログは、四谷学院「発達支援チーム」が書いています。
10年以上にわたり、発達障害のある子どもたちとご家庭を支援。さらに、支援者・理解者を増やしていくべく、発達障害児支援士・ライフスキルトレーナー資格など、人材育成にも尽力しています。
支援してきたご家庭は6,500以上。 発達障害児支援士は2,000人を超えました。ご家庭から支援施設まで、また初学者からベテランまで幅広く、支援に関わる方々のための教材作成や指導ノウハウをお伝えしています。
このブログでは、発達障害のあるお子様をはじめ保護者の方やご家族、支援者の方が笑顔で毎日を過ごせるよう、療育・発達支援のヒントを発信していきます。
コメント