こんにちは、55レッスンの生田です。
園や学校での様子は、家庭での子どもの様子と少し違うこともあります。
そのため・・・
「学校でうまくやれてるかな?」
「園で仲のいいお友達はいるかな?」
と、様子が気になりますね。
集団生活を円滑に送るために必要なのがソーシャルスキルです。
今回は、ソーシャルスキル、そしてそのスキルを伸ばすためのソーシャルスキルトレーニング(SST)についてお話ししていきます。
目次
ソーシャルスキルとは
ソーシャルスキルとは、社会生活や対人関係を円滑に営んでいくために必要な技能のことを言います。
たとえば、
・相手の気持ちを考えて行動する
・マナーを守る
・相手や場面に応じた話し方をする
私たちは、日常生活を送る中で、集団のルールを守る、あるいは他の人の行動を観察するといった経験を積むことで、自然と身に付けていきます。
ソーシャルスキルトレーニング(SST)の必要性
しかし、自閉症などの発達障害のある子どもは、ソーシャルスキルを自然に身に付けるということが難しい場合があります。
それには、以下のような障害特性が影響していると考えられます。
・人への興味関心が薄いこと(あるいは限定的であること)
・相手の気持ちを想像することの困難さ
・獲得したスキルを他の場面へ応用することが難しいこと など
そこで必要になってくるのが、「ソーシャルスキルトレーニング」です。
「Social Skills Training」の頭文字をとって、「SST(エス・エス・ティー)」とも呼ばれます。
発達障害のある子ども達でも、一つひとつ丁寧に指導していくことで、時間はかかるかもしれませんが、ソーシャルスキルを身に付けていくことができます。
このトレーニングのことを、「ソーシャルスキル・トレーニング」と呼びます。
ソーシャルスキルトレーニングの進め方
(1)身に付けたいスキルの「優先順位」をつける
「できるようになってほしい」「直してほしい」と思うことは、たくさんあるかもしれません。
ですが・・・
「ちゃんとあいさつするのよ!」
「電車では静かにしなさいって言ってるでしょ!」
毎日あらゆる場面で注意を受けるお子さんにとっては
「また怒られた」
「わかってるんだけど、できないんだよな」
と失敗体験が積み重なるばかりです。
また、あれもこれも気を付けなくてはならないという状況になるため、指導もなかなか定着しませんし、毎回怒らなくてはならい保護者側も疲れてしまいます。
「今、一番必要なことは何か?」と優先順位をつけて、身に付けたいスキルを絞り込んで指導をしていきましょう。
(2)スモールステップで目標をクリアする
ソーシャルスキルは、追求し始めると、何がゴールかわからなくなってしまいがちです。
例えば、「しっかり挨拶をする」。
具体的にはどんなことが「しっかり」ということなのでしょうか?
あまり漠然としたことを目標としてしまうと、いつまで経ってもゴールできなくなってしまいます。
お子さんも保護者側も達成感を味わいながら進められるように、これくらいなら達成できそう!という内容を、目標に設定するとよいでしょう。
「あいさつ」を目標とするのであれば、さらに小さい目標も考えられます。
「朝、起きたら必ず挨拶をする」
「目を見て挨拶をする」
「挨拶をされたら、返す」
1つ目ががクリアできたら、今度はここまでできるように…というように、段階的に指導を行っていきます。
(3)トレーニングの時間を作る
ソーシャルスキルは、日常生活の中で行われているものです。日常生活の中で都度教えていくことができます。
しかし、その頻度が少ない場合には、なかなか子供が経験を積むことができません。
経験を積めるようにするため、意図的に場面設定をしてトレーニングを行いましょう。
例えば、「買い物」のスキルを身に付けたい場合には、一緒に買い物に行くだけでなく、おもちゃのお金を使ってお店屋さんごっこをする、財布から言われた金額のお金を出す練習をするといった取り組みが考えられます。
家庭の中でソーシャルスキルトレーニングを行う時は、なるべく楽しい雰囲気で行えるようにすることがポイントです。
なお、場面設定をする際は、時間帯や環境など、お子さんが落ち着いて取り組めるような設定にしましょう。
(4)フィードバックをする
ソーシャルスキルは、「自然と身に付けてきた」という大人が多いため、どんな風に教えていいかわからない、ということもあります。経験を積ませる、ということはとても大切です。
「ここは良かったよ!」と褒めたり、「次は、こうできると良いね。」と改善のポイントを肯定的に伝えたりして、ポジティブな雰囲気で終わると、お子さんの自信につながります。
園や学校生活の中で失敗体験が多いお子さんの場合、特にこうした関わりが大切になってきます。自信が持てると、「もっと上手に関われるようになりたい」という意欲もわいてきます。
もしも、「よくわかっていないかな?」と感じても、「どうせできないから」「トレーニングなんて意味がない」とは思わず、地道に続けていきましょう。
生活場面での働きかけ
繰り返しになりますが、ソーシャルスキルは、すぐに身に付くものではありません。
ソーシャルスキルトレーニングの効果を十分に発揮させるためには、生活場面での働きかけも大切です。
たとえば、相手の気持ちを想像するためには、まずは自分だったらこんな時どんな気持ちになるかという、自分の気持ちの理解ができていなくてはなりません。
自分の気持ちの理解を促すためには、「やったね、嬉しいね!」、「雨で公園行けなくて、悲しいね。」というように、保護者側が気持ちを代弁してあげることが有効です。
言葉以外のコミュニケーション
コミュニケーションは言葉だけでで行うものではありません。姿勢や態度、声の大きさ、視線といったことも大切になってきます。
適切な表現の仕方を覚えても、目を合わせなかったり、その場にふさわしい声の大きさでなかったりすると、相手や周囲が不快な思いをしてしまう可能性があります。
・他の人の話が終わるのを待ってから、話す
・相槌を打つ
・相手が話を聞ける状態か確認してから話し出す
・適切な声の大きさで話す
・相手の目を見て話す など
日常生活の中で、適宜、ソーシャルスキルトレーニングとしての取り組みと関連させながら、意識させていきましょう。
「電車では2の声で話せるといいね。」、「お話を聞く時は、どうするんだっけ?」などとの言葉かけをして促すこともできます。
ソーシャルスキル・トレーニングの教材
家庭でソーシャルスキルトレーニングを行うための教材も色々と市販されています。
もっとも大切なことは、お子さんの発達段階に見合った教材を選ぶということです。
ぴったりの教材を活用すれば、トレーニングが効果的に進められるでしょう。
四谷学院の55レッスンでは、小学校就学後のレベルになると「生活・ソーシャルスキル」という科目の学習を通して、スモールステップでソーシャルスキルを育てていきます。
全面フルカラーのソーシャルスキルのプリントは、「楽しい!」「もっとやる!」とお子さんからも大人気です。
55レッスンについて、詳しくはこちらをご覧ください。
このブログは、四谷学院「発達支援チーム」が書いています。
10年以上にわたり、発達障害のある子どもたちとご家庭を支援。さらに、支援者・理解者を増やしていくべく、発達障害児支援士・ライフスキルトレーナー資格など、人材育成にも尽力しています。
支援してきたご家庭は6,500以上。 発達障害児支援士は2,000人を超えました。ご家庭から支援施設まで、また初学者からベテランまで幅広く、支援に関わる方々のための教材作成や指導ノウハウをお伝えしています。
このブログでは、発達障害のあるお子様をはじめ保護者の方やご家族、支援者の方が笑顔で毎日を過ごせるよう、療育・発達支援のヒントを発信していきます。
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