監修:計野 ちあき(言語聴覚士)
ことばの発達相談室ほっとほっと代表
都内の市や区において指導や研修を担当。言葉と発達相談室 ほっとほっとでは、言葉の発達やコミュニケーションに関しての相談を伺い、お子様の発達に合わせた指導を行っている。詳しいプロフィールはこちら。
こんにちは、55レッスンの生田です。
「二語文が話せません」
2歳~3歳のお子さんをもつ保護者の方から、このようなお悩みをいただくことがあります。
二語文とは、「りんご たべる」「でんしゃ はしった」というように、2つの単語からなる文のことを表します。保育園における保育のガイドラインともいえる『保育所保育指針』によると、おおむね1歳3か月から2歳未満で二語文を話し始めるとされています。
二語文が話せないと、たとえば、電車に乗りたい時に「でんしゃ」と単語を発して、見たこと・感じたことを表現しようとします。そのため、大人は電車に乗りたいのか、見たモノの名前を発しただけなのか、ことばの意図を汲み取れないこともあるかもしれません。
一方で、二語文が話せるようになると、「でんしゃ のる」「わんわん いる」という風に、他者と明確にコミュニケーションが取れるようになってきます。
つまり、自分の意思を伝え、他者との会話を広げるためにも、二語文を話せるようになることはお子さんにとって重要な課題と言えるでしょう。
そこで今回は、「まだお子さんが二語文を話せない」というお悩みをお持ちの保護者の方に向けて、考えられる理由と、ご家庭でできる2つの支援をご紹介しています。支援の一例として、ぜひ参考になさってくださいね。
目次
ことばの発達の目安
幼児は、1歳ごろから初語を話し始めるとされています。初語とは、「マンマ」「ワンワン」などの1つの単語のみで形成され、「マンマ」=「ごはんをたべたい」、「ワンワン」=「いぬがいる」など、「意味をもつことば」として機能します。
2歳ごろになると、ある時期を境に語彙が爆発的に増加します。これを語彙爆発と呼び、二語文は、語彙爆発のあとに自然と形成されるものと言われています。
ことばが出ない理由
ただし、ことばの発達には個人差があります。健診などで「様子を見ましょう」と言われたことのある方もいらっしゃるかもしれませんね。しかし、それでもなかなかことばが出ない、という場合には、いくつかの理由が考えられます。
- 聴覚に問題がある
- コミュニケーションの機会が少ない
- 知的障害・発達障害
- 機能障害(発声や発語に必要な器官に障害、もしくは未熟さがある)
これらの理由のいずれかに当てはまることもあれば、複数の原因が複雑に絡み合っていることもあります。
一方で、
「語彙は増えているはずなのに、二語文で話さない」
「二語文で話すことはあるけど、コミュニケーションが続かない」
というように、発語はあるけれど会話が広がらない、というケースもあるでしょう。ここでは、見落としがちな2つの原因をご紹介します。
語彙の種類が偏っている
とにかく単語をたくさん覚えれば二語文を話せるようになるのかと言うと、実はそうではありません。二語文には、以下のような品詞の組み合わせがあります。
「そら あおい」 ……「名詞+形容詞」
「ワンワン ふわふわ」……「名詞+副詞」
発語は増えているのに二語文が出てこない、という場合は、単純に語彙の数が少ないだけでなく、たとえば名詞ばかりを覚えていて、動詞や形容詞の語彙の数が少ない、という可能性も考えられます。まずはお子さんが普段から話していることばに注目することで、伸ばしていくべき語彙の種類を把握できるといいでしょう。
語彙の意味を理解できていない
「ニャンニャン」「しろい」「はしる」などの名詞や形容詞、動詞などの語彙を覚えられていても、二語文が話せないこともあります。その理由として多いのが、語彙の意味や使い方を理解できていない、というケースです。
単語を話せていると、大人は「意味を理解して使っている」と思いがちですが、覚えたことばの音や響きをただ再現していたり、オウム返しのように大人のマネをしているだけだったりということもありえます。
発語ができても、それが何を指すのか、どういう状態のことを言っているのかを分かっていなければ、二語文として組み合わせることはできません。また、子どもの視線や行動で何を言いたいのかを先読みして大人が要求を満たしてしまい、話す機会を失っている場合も考えられます。
このように、一括りに「ことばが出ない」と言っても、その原因はお子さまによって様々です。気になる場合は一度専門家に相談してみるとよいでしょう。
ご家庭でできる2つの支援法
ここからは、ご家庭でできる具体的な支援法を2つご紹介していきます。
「言葉を引き出しやすい環境」を、普段の生活の中で整えていきましょう。
部分的に復唱させる
部分的に復唱させる・初語から広がらない、というお子さんに、いきなり二語文を話すようにうながしても上手くいかないものです。まずはスモールステップで、部分的に大人のマネをしてもらうとよいでしょう。
保護者:「なに たべる?」
子ども:「すいか たべる?」
このように、目の前に実物がある状態だと、「なに」=「スイカ」とことばが出やすくなり、かつ「たべる」の部分は復唱するだけでいいので、おのずと二語文で返しやすくなります。さらに、このやりとりのあと実際にスイカを食べてもらうことで、ことばと体験が結びついて、「たべる」という単語の理解も深められることでしょう。
もしも「なに たべる?」と尋ねて、「すいか」とだけ答えたとしたら、今度は「すいか どうする?」と尋ねてみましょう。先ほどとは逆に、「すいか」という名詞を復唱させ、「たべる」という動詞を子どもに考えてもらいます。
この「復唱させる」という行為は、二語文に発展する上で非常に重要なステップです。
ただし、こちらが求める反応が返ってくるまで何度も繰り返すと、子どももうんざりしてしまって、ことばを発すること自体に消極的になりかねません。そのため大人は、子どもの話した言葉が伝わったという気持ちを受け止め、「強制しない」という姿勢を心がけることも大切です。
同じモノを見て話す
手を洗って、冷たいと感じている時に「て つめたいね」
踏切が鳴っている時に「ふみきり カンカンだね」
アイスを食べて、おいしそうにしていたら「アイス おいしいね」
など、二語文をうながすチャンスは日常にあふれています。
この時に大切なのは、大人と子どもが同じモノを見ている時に声をかける、ということです。
特に、子どもが何かに注目している、行動している場面をとらえて話しかけるとよいでしょう。
たとえば、「おなは きれいだね」と話しかけた際に、子どもは空に浮かぶ雲を眺めていたとしたら、「おはな きれい」という言葉の理解にはつながりませんよね。そこで、まずは「ほら、見てごらん」という風に声をかけたり、指さしをしたりして、子どもの注意を引いてから話すことが重要です。
「同じモノを一緒に見ている」と子どもが理解できるようになると、ことばの発達だけでなく、他者に共感する力も育っていくことが期待できるでしょう。
絵本を活用しよう
でも、最近はなかなか気軽に外に出られないこともありますよね。そんな時におススメのアイテムが、絵本です。何度も繰り返し読んでいる絵本だと、先の展開が予測できるので二語文をうながしやすくなります。
「わんわん びゅーん!」
「わんわん びゅーん!だね、とってもはやいね」
「このあと どうなる?」
「うさぎ ねんねする」
「うさぎ ねんねしているね、気持ちよさそうだね」
このように、会話の中で子どもから発せられたことばをまねて返すことで、お子さんは自分の言葉が伝わったとを感じることができます。保護者は別のことばを付け加えるなどして、言い方をアレンジしながら先の展開を促せるといいでしょう。
もしかすると、「何度も同じ本を読まされて飽きちゃったな……」と感じている保護者の方もいらっしゃるかもしれません。そのような方も、こうした視点を踏まえて読み聞かせをしてみると、「話せることばが増えている」「次の展開を二語文で話せた!」という風に、新たなお子さんの成長を感じられることもありますよ。
まとめ:二語文を話せるようになるために
いかがでしたか?
今回は二語文を話せないお子さんに対して、考えられる理由と、ご家庭でできる2つの支援をご紹介しました。
今回ご紹介した方法は、実際に現場で活動されている専門家の方も実施している方法ですが、なかなか結果がでない場合もあるかもしれません。
前提として、つまずいているポイントや適切な支援の方法というのは、ひとりひとり異なるものです。
「ことばが出にくい子=ことばの訓練が必要」と思いがちですが、実はそれだけでは不十分な場合も多いと言われていますから、お子さんに合った支援が必要になります。
四谷学院の55レッスンでは、小学校入学前から、「ことば」「かず・ちえ」といったオリジナルのカリキュラムで、お子さんの発達を総合的に促すことができます。
生活の中でことばの発達を促すとともに、55レッスンでも「ことば」の理解を深めることで、お子さんのさらなる成長が見込めるでしょう。
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また、お子さんのことばの発達については、お住いの地域の「ことばの教室」でも支援を受けることができます。詳しくはこちらの記事をご覧ください。
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民間の教室についてはこちらの記事でご紹介しています。
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このブログは、四谷学院「発達支援チーム」が書いています。
10年以上にわたり、発達障害のある子どもたちとご家庭を支援。さらに、支援者・理解者を増やしていくべく、発達障害児支援士・ライフスキルトレーナー資格など、人材育成にも尽力しています。
支援してきたご家庭は6,500以上。 発達障害児支援士は2,000人を超えました。ご家庭から支援施設まで、また初学者からベテランまで幅広く、支援に関わる方々のための教材作成や指導ノウハウをお伝えしています。
このブログでは、発達障害のあるお子様をはじめ保護者の方やご家族、支援者の方が笑顔で毎日を過ごせるよう、療育・発達支援のヒントを発信していきます。
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