こんにちは。四谷学院の療育通信講座、ブログ担当のnecoです。
自閉症の子の構造化は減らしていくべきかvol.1
⇒ 将来に備えて構造化がなくても生活できるようにしていくべきか?
自閉症の子の構造化は減らしていくべきかvol.2
⇒ 構造化を増減するタイミングは?
前回・前々回と、構造化について書いてきています。
構造化をなくすかどうかを考える時、大前提となる視点があります。
構造化と上手に付き合っていくための視点を考えてみましょう。
あるお子さんのエピソード
あるデイケアセンターに通っているお子さんのエピソードを伺ったことがあります。
そのお子さんは、登園の支度を、一人で何も見ずにできるお子さんです。
その彼が、他の児童のために用意されていた支度の手順書を見て、「これがあると安心するんだ」とつぶやいたそうです。
この手順書は、彼自身もかつて使用していたものでしたが、彼はすでに一人で支度ができるようになったために、手順書は「卒業」しました。
このお子さんは手順書なしでも特に困った様子も見せず淡々と支度をしているように見えていたそうです。
が、実は無意識に緊張しながら作業をしていたのかもしれません。
次は何をするんだっけ・・・
[/speech_bubble] 手順書を見ずに作業できるようになっても、負担はかかっているかもしれない
構造化は特別なことではない
わたしたち大人も、買い物メモを見ながらスーパーを回ったり、ToDoリストを作って仕事のスケジュールを管理したりすることを当たり前のように行っていますね。
買い物メモやToDoリストがあるおかげで、余計なことを気にせず、行動や思考に集中できます。
発達障害の子供たちにとっての構造化もこれと同じです。
構造化は記憶・思考の外部装置
先述のお子さんにとっての「手順書」や、大人が活用する「買い物メモ」「ToDoリスト」は、いわば人の記憶や思考の外部装置です。
頭の外に取り出して置いておくことで、それについて考える負担を減らすことができます。
一般的には、毎朝の支度などルーティンとして行う作業は、脳の中で自動化され、何も考えなくても勝手に手が動くようになります。
「5+5=10」のように何度となく繰り返してきた計算や、スキップのようなやや複雑な運動、自分の名前を書くことなども、大人は何も考えなくても瞬間的にこなすことができますね。これも自動化の一つです。
脳は自動化によって負担を減らし、必要な思考や活動のために力を割けるようにしています。
自動化が難しい子供たち
ところが認知に偏りを持つ発達障害の子供たちの場合、このような自動化が難しかったり、できるまで時間がかかったりします。
自動化できていない部分はいちいち頭を働かせて思い出したり考えたりしなくてはならず、脳に大きな負担がかかり、本来必要な場面で脳が活躍できなくなってしまいます。
このような背景の下、構造化は、目で見てわかりやすい形で情報を提示したり、脳に入る情報を制限したりすることで、脳の負担を減らし、脳が必要な働きを適切に行えるようにサポートする方法なのです。
構造化と上手に付き合う
このように見てくると、構造化は、単純に「減らせばいい」「増やせばいい」というものではないことがわかりますね。
一番気をつけるべきなのは、構造化を増やしたら増やしたきり、減らしたら減らしたきりで固定してしまうことです。
調子が良い時には構造化を減らし、調子が悪い時には構造化を増やすといったように、ご本人の状態に合わせて柔軟に使い分けるのが理想です。
最終的には、ご本人が自分で自分の構造化を管理できるようになるのが一番ですね。
発達段階によってどこまで対応できるかは差があると思いますが、「不安になったら絵カードを見る」「手帳でスケジュールを管理する」など、ご本人にできる範囲でのセルフマネジメントを視野に入れて練習を進めると良いでしょう。
大人が使う買い物メモと同じくらい、手軽で便利なツールとして、構造化を使いこなし、上手に付き合っていけると良いですね。
それでは、また。
自閉症の子の構造化は減らしていくべきかvol.1
⇒ 将来に備えて構造化がなくても生活できるようにしていくべきか?
自閉症の子の構造化は減らしていくべきかvol.2
⇒ 構造化を増減するタイミングは?
自閉症の子の構造化は減らしていくべきかvol.3
⇒ 構造化と上手に付き合う考え方とは?
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このブログは、四谷学院「発達支援チーム」が書いています。
10年以上にわたり、発達障害のある子どもたちとご家庭を支援。さらに、支援者・理解者を増やしていくべく、発達障害児支援士・ライフスキルトレーナー資格など、人材育成にも尽力しています。
支援してきたご家庭は6,500以上。 発達障害児支援士は2,000人を超えました。ご家庭から支援施設まで、また初学者からベテランまで幅広く、支援に関わる方々のための教材作成や指導ノウハウをお伝えしています。
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