ルールを守れない子ども どう対応する?【自閉スペクトラム症,ADHD】

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ゲームに負けそうになると怒ってしまう
ルールを決めてもいつも違うことをやってしまう……

発達障害のある子どもを支援されている保育士さんや放デイなどの先生から、
ルールを守ることがむずかしい子どもにどう対処すればいいですか?」
といったご相談をよくいただきます。

発達障害のあるお子さんのなかには、自分の気持ちをコントロールすることが困難だったり、言葉の理解に時間がかかったりする子もいます。
そういったお子さんにとって、「ルールを守る」ということは、大人が想像する以上に大変なことだと言えます。

園や学校のなかでルールを守れないと、お友達同士のトラブルにつながったり、活動がスムーズにいかなかったりと、困った場面が頻繁にでてきてしまいますよね。

そこで、今回の記事では「ルールを守れない子ども」への支援法について、いくつかのパターンに分けてご紹介しています。
お子さまに合った支援法を一緒に考えていきましょう。

ルールを守れない理由は?

ルールを守ることができるようになるための最初のステップは、
なぜルールを守れないのか?
という理由を明確にすることです。

たとえば、ゲームで負けそうになると怒ってしまって、活動に最後まで参加できない、もしくはルールを無視してしまう、というような場合は、感情のコントロールの仕方を学ぶ必要があります。

一方で、そもそもルールを理解することがむずかしい、覚えられない、といったケースもあるかもしれません。
その場合は、まずは本人の理解しやすい方法で説明し、いつでもルールを確認できるような工夫が必要、ということが分かりまよね。

このように、原因が分かれば、支援の手立てを考えやすくなります。

感情のコントロールがうまくいかない場合

発達障害のあるお子さんの中でも、とくにADHDのお子さんの場合、成功することにこだわったり、負けることを受け入れられなかったりする子が多いと言われています。
感情のコントロールが苦手なお子さんが、ルールを守って活動に参加できるようにするためには、事前準備が大切です。

事前に目的や目標の確認をする

まずは、活動を始める前に、その日の活動の目的や目標を明らかにしておきましょう。

例えば、その日の活動がドッヂボールであれば、目標を次のように設定します。

  • たくさん汗をかいて運動して、午後の給食をおいしく食べること
  • 遊びで一番ハラハラしたところを、自分の言葉で先生に伝えること

このとき、勝つことや点数を取ることなどを目標としないことがポイントです。

さらに、目標を定めた上で「目標を達成するために、最後まで活動に参加する」ということを約束しておきましょう。
勝ち負けにはこだわらないという姿勢を大人が見せることで、子どもも「最後まで活動すること」に意識を向けやすくなります。

そして、活動が終わったあとには
「最後まで参加できたね!すごい!」
と、まずは事前に決めた約束を守れたことをうんとほめてあげてください。

また、活動後のフォローも大切です。
たとえば先ほど例に挙げたドッヂボールであれば、

「ボールを避けるために、どんな工夫をしたのかな?」
「前よりボールを投げるスピードが上がったね」

など、勝敗の結果ではなく、活動の内容に目を向けて声をかけることで、勝ちを喜びすぎたり、負けて取り乱したりするリスクを避けることができます。

ルールをつくる

ルールは本来、みんなが安全に、快適に過ごせるためにあるものです。
ただやみくもに「あれもだめ、これもだめ」と禁止するだけだと、窮屈になってしまいますよね。

もちろん、社会的なルールなど、規範に沿った行動が求められる場面もありますが、遊びのような限られた時間内、範囲内のものは、柔軟にルールを変えてみることがむしろ効果的な場合があります。

・キャッチボールはワンバウンドしてもよい
・鬼ごっこは一定時間経ったら、タッチしていなくても鬼を交代する
・ジェンガは3回まで両手でブロックを抜いてもよい

このように、
「どんなルールならお互いが楽しめるか」

を考えることで、ルールに縛られることなく、お子さん自身が納得した上で、積極的にルールに沿った行動ができるようになることが期待されます。

発想の転換をする

ここまで、活動を始める前にできる事前準備についてお伝えしました。
でも、実際に活動が始まってみると、思うように感情をコントロールできない場面もでてくるかもしれませんね。

そうした場合には、発想の転換が大切です。

たとえば、ババ抜きでジョーカーを引いたり、鬼ごっこで鬼になったりした時、「最悪だ!」と思ってしまうお子さんもいるかもしれません。

そうした時に、

「ババ抜きはジョーカーを引いても澄ました顔をするのが楽しいんだよ」
「鬼ごっこの鬼は、足の速さだけじゃなくて戦略が大事なんだよ」

など、ピンチを楽しめるような声かけを大人ができると、子どもも気持ちを切り替えやすくなります。

子どものかんしゃくへの対応の仕方については、以下の記事でも紹介しています。
https://yotsuyagakuin-ryoiku.com/blogs/kanshaku2/

ルールを覚えていられない場合

一方で、発達障害のなかでも、とくに知的障害のあるお子さんや、自閉スペクトラム症のお子さんの場、口頭で説明されただけでは活動のやり方が理解できなかったり、集中できる時間が短かったりして、うまく活動に参加できないこともあります。

そうした場合は、目で見て理解できるような工夫をする、活動の時間を短くするなどの工夫が効果的です。
一度ルールを覚えてしまえば、その後、正確に手順に沿った行動ができるお子さんも多いので、ここでも事前準備が肝心と言えます。

絵カードを使う

活動を始める前に、絵カードを使ってていねいに説明すると、お子さんも理解がしやすくなります。
このとき、絵カードはなるべくシンプルに、必要な情報だけを載せることが大切です。

▼しっぽとりゲームの例

いつでもルールを確認できるように、絵カードはポケットに入れたり、目に見えるところに貼ったりできるといいでしょう。

目印をつける

活動中も、自分の役割や活動の流れがひと目で分かるように、目印をつけておくという方法もおすすめです。
この時も、絵カードと同様に、目で見て分かる工夫が活きてきます。

ボードゲームでは順番が回ってきたら机の上に立て札を置く
鬼ごっこでは鬼が赤色の帽子をかぶる など

ロールプレイをする

はじめての遊びや活動は、誰でも緊張したり、不安になったりするものです。
発達障害のあるお子さんの場合、同じ活動を何度か繰り返していても、なかなか覚えられずに、毎回「はじめて」のように感じられることもあります。

ルールを覚えるためには、目で見て分かる工夫が効果的である一方で、「分かる」と「できる」は違うという視点も大切です。
あらかじめ先生と生徒で、活動の前にはロールプレイをしておくと、事前に教わったルールを実践しやすくなります。
この時、鬼ごっこなら鬼と逃げる人の役割入れ替えたり、カードゲームなら順番を入れ替えたりして、いくつかのパターンを練習しておけるといいでしょう。

まとめ:ルールを守れない子ども どう対応する?

ここまで、ルールを守れない子どもへの支援法についてご紹介してきました。

・ルールを守れない理由を明確にすること
・理由ごとの対処法を見つけること
この2つが支援の基本となります。

もしかすると、「この前はうまくいったのに、同じことをやってみたらうまくいかなかった……」ということもあるかもしれません。
しかし、子どもの心身の発達や周囲の環境は変わりゆくものです。
焦らず、その時々で、お子さまに合った支援法を見つけることが大切です。

本記事が、なるべくスムーズに、お子さまの「うまくいく方法」を見つけられる手立てになれるといいなと思います。

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