こんにちは、55レッスンの生田です。
今回の記事では、トラウマ(心的外傷)によって起こる反応や、トラウマと発達障害との関連性についてご紹介していきます。
もしもお子さまがトラウマを抱えたとき、ご家族をはじめとする周囲の人がどのようにかかわっていくのがよいか、一緒に考える機会になればと思います。
動画でも公開しました
目次
子どものトラウマ反応とは
子どもは、大人よりも感情を言葉で表現することが難しいため、トラウマ反応がさまざまな身体症状や行動として生じることがあります。
具体的な例をご紹介します。
参照:第2章 心のケア 各論:文部科学省
1.身体症状
手や足が動かなくなる。意識を失って倒れる。頭痛・腹痛などの体の痛み、吐き気、めまい、過呼吸、夜尿、頻尿、吃音、アレルギー、食欲不振、過食などを起こす。
2.過度の緊張(過覚醒)
過度の緊張が続く。
①眠れない。
②些細な物音にでも驚愕する。
③常に必要以上に緊張している。
3.再体験
怖い体験を思い出し、再体験する。
①突然興奮したり、過度の不安状態になる。
②突然人が変わったようになる。
③突然現実にないことを言い出す。
④恐ろしい夢を繰り返し見る。
⑤その体験を思い出す遊びや話を繰り返し(このことは異常ではないが)、興奮したり、落ち着かなくなる。
4.感情の麻痺(解離状態)
①表情が少なくなり、ぼーっとしている。
②泣くことができない。
③体験を思い出すことを避けようとする。
④生き生きとした現実感が得られなくなる。
5. 精神的混乱
行動や思考にまとまりがなくなり、現実の出来事とそうでないことの区別がつきにくくなる。
6.喪失や体験の否定
①家族が死ななかったかのように行動し、現実への適応を拒否する。
②亡くなった人の声を聞く。
7.過度の無力感
①生活全体の活動性が著しく低下する。
②乳児や幼児の場合、食事などを取らなくなる。
③自信がなくなり、引っ込み思案になる。話をしなくなる。
8.強い罪悪感
①出来事のあらゆることに関して自分の行動を責め、過度の罪悪感が生じる。
②自分の体をたたく、傷つけるなどの自傷行為がでることもある。
9.激しい怒り
暴力を振るう。他者を傷つけたり、物を壊す。
10.著しい退行現象
幼児語の使用、赤ちゃんがえり、わがままなど。
トラウマ反応がいかに子どもの健康的な発達を妨げるのかがよく分かります。身体のケガのように「目に見えるもの」ではないため、トラウマの辛さを大人が気づけないことも多いのです。
一方、トラウマから来るさまざまな症状は目につきやすいため、心配になったり、なんで急にこうなってしまったんだろうと疑問に思ったりするかもしれません。
中には、叱責したくなる言動もあるかもしれませんが、子どもも好きでそうしているわけではない、ということを覚えておきましょう。
気になる様子があったときは、園や学校など、知らないところで変わったことがなかったかヒアリングをし、原因を探ってみましょう。
発達障害とトラウマ
誰かに否定される経験や、発達段階に見合わない要求をされることも、トラウマになる可能性があります。
発達障害のあるお子さん、特に知的な遅れがなく本人の困りごとが気付かれづらい場合は、トラウマを抱えやすい傾向にあると言えるかもしれません。
また、トラウマの症状と、発達障害の特性由来の症状はしばしば似ていることから、どちらが原因で引き起こされたものなのか、もしくは重複しているものなのか、分かりづらい場合があります。
たとえば授業中に当てられた子どもが混乱した場合、過去に大人から強く叱られたことがフラッシュバックしている可能性もあれば、その時たまたま感情のコントロールがうまくできなかった可能性もあります。
お友達をうまく作れないという場合は、過去に仲間外れにされた経験があるのかもしれませんし、円滑なコミュニケーションをとることが難しいという発達障害の特性を持っているのかもしれません。
このようなトラウマと発達障害の症状が複雑に絡み合って、「生きづらさ」に輪をかけてしまうこともあります。トラウマへの対処の仕方と発達障害への対処の仕方、その双方を持ち合わせる場合の対処の仕方はそれぞれ異なります。
医師やスクールカウンセラーといった専門家を頼り、子どもが日常生活を滞りなく送れるようサポートしていきましょう。
トラウマとの向き合い方
お子さんが「心の傷」を抱えていると話してくれたとき、あるいはご家族の誰かが気づいたとき、周囲の人はどのように支援すべきでしょうか。
トラウマを抱える子どもにとって何より大切なのは、トラウマを癒やす環境を整えることです。
もちろん、常に安全・安心でいられる場所や人間関係を提供し続けることは、簡単なことではないかと思います。そのため、病院や園・学校、相談機関などと連携し、継続的にサポートしていくことが重要です。
まずは、子どもにとっての安全基地を用意してあげましょう。ここなら自分が傷つけられることはない、怖い思いをしたらここに戻ってくればいい、という居場所があると外の世界でのチャレンジもしやすくなります。
子どもをほめる機会をつくる、好きなことや得意なことに取り組ませるなどして、子どもの自己肯定感を守っていきます。
トラウマの事例
以前、55レッスンを受講された成人の方で、学校の担任の先生の厳しい指導により、できていたこともできなくなってしまったという方がいました。それから何年も過ぎた頃、弟さんのノートに落書きをするようになったそうですが、ちょうどその頃から55レッスンを始めたところ、落書きがピタッと止んだそうです。
久しぶりに55レッスンで勉強ができて嬉しくてたまらないという様子で、落書きも「もしかしたら自分も勉強したいというサインだったのかも…」とお母様がおっしゃっていました。受講者ご本人は発語がなく本意を知ることはできませんでしたが、トラウマにより深く傷ついた心が癒されていく兆しを感じた出来事でした。
発達障害とトラウマ~まとめ~
トラウマを抱えながらも、普段はのびのびと日常生活を送っているお子さんもたくさんいます。
トラウマを克服することばかりに気をとられすぎず、無理のない範囲でさまざまな生活体験を積み重ねていけるようサポートしていきましょう。
そうして、長い目で見ていくことで、やがて傷が癒えることもあります。
子どものできることに注目して、子どもの自尊感情を守っていけるようにしましょう。
このブログは、四谷学院「発達支援チーム」が書いています。
10年以上にわたり、発達障害のある子どもたちとご家庭を支援。さらに、支援者・理解者を増やしていくべく、発達障害児支援士・ライフスキルトレーナー資格など、人材育成にも尽力しています。
支援してきたご家庭は6,500以上。 発達障害児支援士は2,000人を超えました。ご家庭から支援施設まで、また初学者からベテランまで幅広く、支援に関わる方々のための教材作成や指導ノウハウをお伝えしています。
このブログでは、発達障害のあるお子様をはじめ保護者の方やご家族、支援者の方が笑顔で毎日を過ごせるよう、療育・発達支援のヒントを発信していきます。
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