こんにちは。四谷学院の療育通信講座、ブログ担当necoです。
前回は、学習障害(LD)の子どもたちが持つ苦手さの一例をご紹介しました。
⇒ 学習障害LDの特性と支援の基本その1
今回は、その苦手さの背景にある障害特性について見ていきましょう。
目次
学習障害LDの子どもたちの4つの苦手さ
学習障害の子どもたちの苦手さは、大きく以下の4つに分けることができます。
2.書くことが苦手
3.聞くこと、話すことが苦手
4.計算や推論が苦手
どれか1つだけが苦手な子もいれば、複数の苦手さを持つ子もいます。
ひとつ一つの苦手さについて、順番に見ていきましょう。
読むことが苦手
「読むことが苦手」の裏には、大きく分けると以下の2つの特性が隠れています。
この2つの苦手さは全く違うところから来ているので、大人が丁寧にお子さんの様子を掴み取ってあげることが大切です。
目の動きによる「見え方」の苦手さ
・文字を目で追うことが難しい
・目のピントを合わせるのが難しい
などの苦手さがある場合、つまずきの原因は「目の動かし方」にあります。目の動かし方、眼球運動につまずきがあると、文字を目で追う「追視」が難しく、
・何度も同じ行を読む
・飛ばし読みをする
といった行動が見られます。
また、目のピントを合わせる機能がうまく働かないと、
・文字がにじんで見える
・二重に見える
といった困難が表れます。
文字に限らず、○や△などの形の認知も難しくなります。
言葉としてのまとまりを意識することの苦手さ
一つひとつの文字を読んで音にすることができても、
それを一つのまとまり、意味のある言葉として理解できていないことがあります。
たとえば「い」「ぬ」と一文字ずつ発音することはできるけれど、それが動物の「いぬ=犬」だと理解しているわけではないので、読み方がたどたどしくなります。
学齢が上がると、物語の文章を読むことができても登場人物の心理までは読み取れない、といった困難も出てくることがあります。
書くことが苦手
書くことが苦手、文字が雑で汚い、といった様子を見せる子は多いものですが、LDの子どもたちの苦手さは独特のもので、一般的な練習方法を繰り返しても改善されません。
そんな苦手さの背景には、大きく分けると3つの特性が隠れています。
位置関係の認知の苦手さ
形や大きさのバランスが悪い文字を書く子の場合、見たものの奥行きや、左右・上下の位置関係を認知する力が弱いことがあります。
文字の形や大きさを適切に書くことが難しいため、
・鏡文字を書く
・一つずつの文字の大きさがバラつく
・マスや罫線からはみ出す
といった様子が見られます。
手先を使うことの苦手さ
感覚の偏りから、手先が不器用なことも多く、
・筆記用具を正しく持てない
・適度な筆圧を保てない
といった難しさがあり、文字を書くことの苦手さにつながります。
一時的に記憶することの苦手さ
何かを一時的に記憶しておく力を「ワーキングメモリ」と呼びます。
この機能に弱さがあると、聞いた話や見た文字を再現することが難しくなります。
そのため、
・先生の話を聞き取って書く
・黒板の文字をノートに書き写す
などの作業に困難があり、「書けない」という状態像につながります。
ワーキングメモリの弱さは、聞くこと・話すこと・計算することなど、さまざまな苦手さにもつながり、日常生活のあらゆる場面で小さなつまずきを繰り返すことにもなりかねません。
聞くこと・話すことが苦手
聞くこと・話すことの苦手さにはさまざまな要因が絡み合っていますが、主な理由を切り取って考えてみましょう。
必要な音だけを聞き取る苦手さ
クーラーの動作音、窓の外を走る車の音、イスのきしみ、他人の呼吸や咳、、、私たちの周囲には実にさまざまな音が流れています。
これらの音の中から、必要な音(たとえば先生の指示や会話の相手の声など)だけを聞き取り、それ以外の音は上手に無視することができるからこそ、私たちは「聞く」「話す」ことができているのですが、聞く力の弱いLDの子どもたちはここに苦手さが隠れています。
たとえば、注意力が弱い子の場合、聞き漏らしが多くなります。
聴覚過敏がある子の場合、周囲のわずかな雑音が気に障るほど大きく聞こえ、必要な音に意識を向けられません。
全ての音が同じように意識に入ってくる子の場合、かすかな雑音も先生の話も全て同じ音量で聞こえるので、先生の話だけを聞き取ることが難しくなります。
音を聞き分けることの苦手さ
似た音や、長音・拗音・促音の聞き分けが難しいと、
・「はち」と「はし」などの似た言葉を聞き分けられない
・長音の聞き落としがある(例:「ひこうき」が「ひこき」になる)
・拗音の聞き落としがある(例:「シャベル」が「アベル」「サベル」「タベル」などになる)
・促音の聞き落としがある(例:「ねっこ」が「ねこ」になる)
などの様子が見られます。
文字の読み書きのスキルは、音を正しく聞き分け、発音することが土台になっています。
そのため、うまく聞こえない音は、正しく読み書きすることもできません。
考えを頭の中で整理することの苦手さ
・人の話を聞いて理解することはできるけれど、自分が話す番になると言葉が出てこない
・自分の考えをうまく話せない
などの様子を見せる場合、脳内の情報処理能力につまずきがあると考えられ、頭の中で自分の言いたいことを整理して、文章にして口に出すという作業に難しさがあります。
計算や推論が苦手
読み書きの苦手さと同様、計算や推論の苦手さにもさまざまな要因が絡み合っています。
これまで述べてきた3つの苦手さとも深い関係があります。
ざっくりと全体を眺めてみましょう。
・数の順序、少数、分数などがわからない
数の基本的な概念が理解できなければ、当然計算もできません。
・ワーキングメモリが弱い
繰り上がりや繰り下がりの数を覚えられず計算や暗算が難しくなります。
指を使った計算からなかなか抜け出せないこともあります。
・図形やグラフの問題が苦手
見て認知する力が弱いと、図形やグラフの問題の形を正しく捉えられません。
手先の不器用さを持っている子の場合は、コンパスや定規で図形を描くことも苦手です。
・証明問題や作文が苦手
事実から結果を予測する、結果から原因を推し量るといった作業を「推論」と呼びます。
この「推論」に苦手さがあると、証明問題や作文などの課題から、
日常的なコミュニケーションにもつまずきがちです。
以上、学習障害(LD)の子どもたちのさまざまな苦手さを、大きく4つの特性に分けてご紹介しました。
次回は、これらの特性をふまえて、子どもたちにどのように関わっていけば良いか、支援のポイントをお伝えします。
それでは、また。
55レッスンは体系的なプログラムなので、日々の取り組みを通してお子さんの
得意・不得意を把握することができます。
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このブログは、四谷学院「発達支援チーム」が書いています。
10年以上にわたり、発達障害のある子どもたちとご家庭を支援。さらに、支援者・理解者を増やしていくべく、発達障害児支援士・ライフスキルトレーナー資格など、人材育成にも尽力しています。
支援してきたご家庭は6,500以上。 発達障害児支援士は2,000人を超えました。ご家庭から支援施設まで、また初学者からベテランまで幅広く、支援に関わる方々のための教材作成や指導ノウハウをお伝えしています。
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