発達障害の子どもの勉強方法と楽しい家庭学習のコツ

※この記事は約12分で読めます。

こんにちは。四谷学院の療育通信講座、ブログ担当necoです。

小さな子どもは誰でも多かれ少なかれ、落ち着いて座っていられなかったり、集中力が欠けやすかったりするものですね。
中でも発達障害のお子さんは、発達の特性上

・すぐに気が散る
・長時間座っているのが苦手
・大人の指導を素直に受け入れられない
・一般的な指導方法では伝わりにくい

といった様子を見せることがあり、楽しく学習を進めるためには、教える大人の側にも工夫が必要です。

55レッスンは、未就学~小学校4年生程度までの学習内容について、ご家庭で学習していただく教材です。

自閉症のお子さんの指導に60年の歴史と高い信頼を誇る武蔵東学園の監修の下、発達がゆっくりだったり、偏りがあったりするお子さんの認知特性に合わせて、一般的なご家庭のお母さん・お父さんにもわかりやすく指導できるよう学習内容と指導方法を徹底的に整えました。

今回の記事では、55レッスンの指導ノウハウをベースに、「文字の読み書き」「算数」「文章の読み書き」を身に付けるコツと、楽しく家庭で学習するために気をつけるべきポイント4つを解説します!(^ ^)

人が言葉や数字の概念をどのように身に付けるのか?を細かく分解して丁寧になぞっていますので、発達障害の子供たちや、勉強が苦手な子供たちへの学習支援を工夫するヒントになればと思います。

文字の読み書きが難しい子どもの勉強方法

人は耳から言葉を覚えます。
文字の読み書きは、まずは「読む」ことから始め、十分に文字になじんでから「書く」練習に進みましょう。

文字の音と形を結びつける

まずは、子どもたちが今までに耳で聞き覚えた言葉に「形」を与えてあげましょう。
ひらがなは表音文字といい、一つの音に一つの文字が対応しています。
私たちが「a」と発音する時、それは「あ」という形で表現できますね。
この一つひとつの対応を覚えるのが最初のステップです。

a=あ、i=い・・・ と、五十音すべてについて、音と形を結びつけます。
文字カードを使って学習するとスムーズでしょう。

読めるようになったら書く練習に

書く練習は、以下のような順番で進めるとスムーズです。

①なぞり書き
②視写(お手本を見て書き写す)
③何も見ないで書く

うまく書けない時はスモールステップで

発達に偏りのあるお子さんは、なぞり書きがうまくいかないことがあります。
なぞり書きは、目で見た通りのところに手を持っていき、思い通りに手を動かすという作業です。
大人にとっては何でもないこの作業も、幼い子どもたちにとっては難しい課題。
焦らず、お子さんのペースでじっくり練習しましょう。

文字をなぞるのが難しいお子さんは、直線・曲線・コイル線・ギザギザ線など、さまざまな線をなぞるところから練習を始めると良いでしょう。
また、そもそも筆記用具を持って書くというレベルに発達段階が到達していない可能性もあります。
この場合は、書くための土台となる身体機能を育むところから練習します。
今回の記事では詳細は割愛しますが、このような時は55レッスンにご相談ください。
担任がお子さんの学習のご様子を踏まえて、どこから練習を始めればよいかをアドバイスします。

清音の読み書き→特殊音節の読み書き

清音の読み書きができるようになってから、特殊音節の読み書きの練習に進みましょう。
特殊音節とは以下のような文字のことです。

特殊音節 一覧
○濁音・・・点々のつく、濁る音 (がぎぐげご、ざじずぜぞ など)
○半濁音・・・丸のつく音 (ぱぴぷぺぽ)
○拗音・・・小さい「ゃゅょ」 (しゃしゅしょ、ちゃちゅちょ など)
○促音・・・小さい「っ」 (ソクス、サカー など)
○撥音・・・「ん」 (えぴつ、うど など)
○長音・・・伸ばす音 (おかさん、ボル など)

特殊音節を正しく読み書きできない子は、発達に偏りがない・生活に困り感のない子どもたちの中にも決して少なくありません。
そのため、具体的な指導方法はかなり細かく研究され、確立されています。

○情報を単純化するために音を記号で表す
○視覚情報によって学習するために文字カードを並べて単語を作る
○興味関心を高めるためにご本人が好きなアニメキャラクターの名前などを使って学習する

など、さまざまな方法が考えられます。
お子さんにとってわかりやすい方法を模索していきましょう。

特殊音節を含む単語を自然に発音できる子でも、正しく書けないことはしばしばあります

 

算数が苦手な子どもの勉強方法

初期の算数の学習で最も大切なのは、数の量感を育むこと。
私たちは、「3」という数字を考える時に、「さん」という音や「3」という形だけでなく、「○○○」という個数も思い浮かべますね。
これが「数の量感」です。

よく勘違いされるのですが、1から10までの数を順番に唱えられるようになったからといって、ものの個数を数えられるようになったわけではありません。
「数唱」と「個数」の概念は全く異なるものです。
この点をよく理解した上で、発達のプロセスに基づき、順番に指導していきましょう。

数の順番を覚え、音と表記を結びつける

まずは基礎知識の確認から。
1から10までの数を順番に言えるように練習します。
数を順番に唱えることを「数唱(すうしょう)」と呼び、算数の学習の大切な土台です。
数唱ができるようになったら、いち=1、に=2、といったように、数字の音と表記を結びつけて覚えます。

個数を捉える

1から10までの数唱ができるようになり、数の表記がわかるようになったら、ものの個数を数える練習に進みます。
数える対象物を一つずつ指さしながら、「いち」「に」「さん」と声を出して数えます。
「いち、に、さん。3個あるね」と声かけしながら、個数の考え方を伝えていきましょう。
最初は1~3個のもので練習し、できるようになったら5個まで個数を増やし、あとは6個、7個と一つずつ数を増やして、最終的にはひとまず10個までの個数を数えられることを目指しましょう。

この時、発達に偏りのあるお子さんは、もの・動作・言葉がバラバラになってしまうことがあります。
指さしの動きと言葉のタイミングが合っていなかったり、一つのものを指さしたまま「いち、に」と言葉だけ先に進んでしまったり、といったようにです。
このような時は、数の学習からいったん離れて、もの・動作・言葉の一対一対応を練習すると良いでしょう。
上下の絵を一つずつ線でつなぐ、一つの穴に一つのビー玉を入れるなど、様々な方法が考えられます。

学習方法に迷われる場合は55レッスンがお役に立てるかもしれません。
詳しくはこちら

自閉症・発達障害のお子さんの家庭療育システム55レッスン

合わせる・分ける

10個までの個数を数えられるようになったら、計算の前段階の練習に進みます。
積み木やブロックなど、わかりやすい具体物を使います。

「2個の積み木と3個の積み木を合わせると、全部で5個になったね」
「3個の積み木は、1個と2個に分けられるね」

といったように、数の合成や分解を練習します。

四則演算

2個と3個は5個になる、3個は1個と2個に分けられる、ということが直感的に理解できるようになったら、四則演算に入ります。

2個と 3個は 5個になる
2 + 3 = 5

このように、これまでに理解した事柄を演算記号(+、-、=など)で表現することを練習します。

 

文章の読み書きが苦手な子どもの勉強方法

文章の読み書きは、文字の読み書きが十分にできることが前提です。
文章の読み書きの練習をスタートする前に、少なくともひらがな清音の読み書きをしっかり身に付けさせてあげましょう。

名詞と動詞を覚える

文章を構成するのは単語です。
まずは基本的な名詞と動詞を覚えましょう。

名詞は、「りんご」「コップ」「はさみ」など、具体的なものの名前で、ご本人の身の回りにあり、日常的に使用する頻度の高いものから練習し、少しずつ言葉を広げていくと良いでしょう。
動詞は名詞よりもわかりにくいので、大人がその動作を実演してみせたり、お子さんにも動作を模倣してもらったりしながら、伝えたいことを明確に示しましょう。
基本的な名詞・動詞を覚えたら、「色」「形」「大きさ」など、ものの様子・性質を表す抽象的な言葉も教えてあげると良いでしょう。

二語文を作る

二語文とは、主語と述語の二つの単語からできている文のことです。

「おみず、のみたい」
「ママ、だっこ」
「ごはん、ちょうだい」
などなど。

まずは名詞と動詞をつなげて文章を作ります。
最初は助詞を使わず、お子さんが知っている言葉をただつなげて二語文を作ります。

たとえば、犬が歩いているイラストや動画を見ながら、「犬、歩いている」
女の子が笑っているイラストや動画を見ながら、「女の子、笑っている」

といったように、絵の内容をお子さんが二つの単語で表現できることを目指して練習しましょう。

スムーズに答えられるようになったら、文章に助詞をつけていきます。

「犬歩いている」
「女の子笑っている」

といったようにです。
この段階では、助詞の意味や使い方を理解する必要はありません。
大人の言ったことをその通りに真似ることができれば十分です。

短文を読み書きする

「○○が、~~している」という程度の、ごく短い文章を読み書きします。
主語と述語にさまざまな単語を入れ替えて練習します。
文章の内容を絵で表現してあげるとわかりやすくなります。

練習する時は、以下の順番で行うとよいでしょう。

①お手本を読み上げる・書き写す
②答えを選択肢から選択する
③自分一人で文章全体を作る

助詞は、「が」「は」「へ」「を」など、使用頻度の高いものから少しずつ練習しましょう。
助詞を文法的に説明すると大変難しくなりますので、基本的には、大人の言ったことを真似る、お手本を書き写すといった作業を通して、丸暗記しながら使い方や感覚を覚えていく方法をお勧めしています。
(小さな子どもが文法を身に付ける時の一般的な方法と同じです。)

構文を複雑にしていく

「○○が、□□を、~~している」
「○○と、△△が、□□に、~~する」

といったように、文章を複雑にしていきます。
練習の順番は、やはりこの通りがよいでしょう。

①お手本を読み上げる・書き写す
②答えを選択肢から選択する
③自分一人で文章全体を作る

この段階の学習で多い課題は、助詞の混乱です。
たとえば、
「いぬが、ねこを、追いかける」
のような文章で、どちらがどちらを追いかけているのか、文意がわからなくなることがあります。
この場合は、

①「いぬが、追いかける」
②「ねこを、追いかける」
③「いぬが、ねこを、追いかける」

このように、①・②の文章をそれぞれ練習してから、もう一度文章を組み合わせてみましょう。

文法を指導するにはさまざまな方法があり、どんな方法がわかりやすいかはお子さんそれぞれです。
お子さんの興味関心のあり方、物事を認知する特徴などに合わせて、指導方法を工夫しましょう。

 

楽しい家庭学習のコツ

以上の学習方法が効果をあげるのは、お子さんが楽しく主体的に学習に参加してこそ。(^ ^)
家庭学習が楽しくなるコツをご一緒に見ていきましょう。

課題のレベルはお子さんに合わせる

課題は難しくても簡単すぎても良くありません。
「できた!」という達成感を味わうには、「今のお子さんがほんのちょっと頑張ればできる」レベルの課題を用意するのがコツ。
「○年生だからこの内容を学ぶ」 ではなく、お子さんが自信を持ってできるところまで一旦戻りましょう。
学習に自信を失っている場合は、簡単にできるところから少しずつエンジンをかけていくのがお勧めです。

見た目が簡単な課題(自分ができるかどうかは別で)に反感を持つ場合は、フラッシュカードのようにパッパッと見て答える練習をするなど、教材の見た目を変化させ、内容は簡単だが難しそうに見えるように工夫しながら「ちょうどよいレベル」を探ると良いでしょう。

学習時間はごく短時間で

小さなお子さんの集中力が続くのは平均15~20分程度と言われています。
未就学のお子さんの場合は、大人には物足りないくらいの時間で切り上げましょう。

特に気が散りやすいお子さんは、最初は5分でも着席していられれば上出来です。
最初は、課題をクリアすることよりも、着席することを目標とした練習を取り入れるのも良いでしょう。
学習に慣れてきたら少しずつ学習時間を延ばしますが、「もう少しやりたい」という意欲を残して終わるのが理想です。

集中できる環境を整える

おもちゃやマンガやゲームが目に入れば気が散るのは当たり前ですね。

窓の外を一瞬通り過ぎる電車やトラック、揺れるカーテン、ちょっとした物音、チラチラする蛍光灯などなど、お子さんの気をそらすものはたくさんあります。
意識が向くとパッと身体が動いてしまうお子さんの場合、一旦席から離れると、気持ちを学習に戻すのが大変です。

○机の周囲をパーティションで囲う
○おもちゃ等は見えないところに片付ける
○窓とカーテンをぴったり閉める

など、お子さんが気を取られる可能性のあるものを一つずつクリアしていって、集中しやすい環境を整えていきましょう。

イラストや絵を活用する

文字だけの文章より、マンガや動画のほうが目に入ってきやすい、私たち大人もそんな経験がないでしょうか。

子どもたちにとっても、イラストや絵の力は絶大です。
さらに、耳で聞くことが苦手なお子さんの場合、言葉で説明されたことはほとんど頭に入らないという可能性もあり、イラストや絵を使って学習することはとても大切なコツです。

その子の得意不得意にもよりますが、伝えるべきことはイラストや絵を示した上で、ごく短い言葉を添えると良いでしょう。
単語を教える時はそのもののイラストを見せながら単語のみを聞かせる、計算する時は数字だけでなく具体物や数図を示す、といったように、直感的に理解できる見せ方を工夫しましょう。

 

 

以上、ご参考になれば幸いです。

詳しい指導方法に悩まれる方、教材を自分で用意するのが難しいとお感じの方、お子さんにとってベストな指導方法を工夫したい方は、55レッスンがお力になれるかもしれません。
詳しくは資料をご請求くださいね。

それでは、また!

 

 

55レッスンは楽しい家庭学習を専門家の視点でサポートします

四谷学院療育55段階プログラム
資料請求はこちらから

コメント