発達障害や知的な遅れの可能性を考えるきっかけとして多いのが「ことばの悩み」。
3歳児ごろまでの子どもの発達は個人差が大きいので、「様子を見ましょう」と言われることも多いのではないでしょうか。
でも、実はこれ、「何もしなくていい」ということではないんです。
今回から、『ことばを育む』ためにできることについて、全3回の記事に分けて考えていきます。
第1回の記事 ⇒この記事です
第2回の記事 ⇒ことばの発達が気になる子どもの語彙を増やすには?
第3回の記事 ⇒ことばの発達が気になる子どもの語彙を増やすには?
動画はこちらをどうぞ!
目次
ことばを話すための3つの条件
音の入り口である「耳」
出口である「口」
そして、聞いた音を正しく解釈し、自分から発信しようとする「脳」
この3つがうまく機能することが、「話す」ための条件となります。
したがって、ことばの悩みのあるお子さんは、この3つのどこかにつまずきがあると仮定して普段の様子を観察できるとよいでしょう。
器官的な問題がある場合
3つの条件のうちの「耳」と「口」に該当する部分、つまり「聞こえ」や「発声」に問題がある場合は、専門的な治療や指導が必要となります。
・突然大きな音を立ててもピクリともしない
・高い音が聞き取りにくそう
・口呼吸が多い
・よだれが多い
・ものを飲み込むのが苦手
・特定の音の発音が難しそう
こうした様子が見られたら、一度専門医に相談されることをおススメします。
ことばが育つプロセス
器官的な問題がないにもかかわらず、ことばの遅れが気になる場合は、先ほどお話した3つの条件のうち「脳」の働きに何らかの偏りがあるのかもしれません。
人がことばを身につけるプロセスは、大きくこちらの5つに分けられます。
②単語を覚える
➂ことばでコミュニケーションをはかる
④文法を理解する
⑤会話ができるようになる
このうち、どのプロセスでつまずいているかによって適切な働きかけは変わってきます。
1つずつ見ていきましょう。
大人とのやりとりを体験する
ことばを話せない乳幼児も、泣き声や身振り、ジェスチャー、指差し、視線などで、大人とやりとりをしています。
赤ちゃんはまず、自分が笑うと相手も笑う、自分が泣くとおっぱいをもらえる、といったように、自分の何らかの発信が相手を動かすことに気付きます。
そして、やがて相手の表情や態度を気にかけるようになり、意思疎通を図ろうとするようになる、というわけです。
ことばを話すための大前提となるのは、こうしたコミュニケーションの意欲と言えるでしょう。
単語を覚える
身の回りのものに興味を持ち始めた子どもは、次第に、ものには名前があることを学びます。
犬を指さした時に「ワンワンがいるね」、車のおもちゃで遊んでいる時に「ブーブーね」といった風に、この時期の周囲の大人は、絶えず子どもにいろいろな声かけをしているのではないでしょうか。
大人からの声かけによって、子どもは「どうやらあれはワンワンというらしい」「これはブーブーというらしい」と理解し始めます。
そして、「大きい、小さい」といった性質を表すことばや、動詞、形容詞などの目に見えないような象徴的な概念は、こうした名詞をある程度獲得した後に育っていくとされています。
ことばでコミュニケーションをはかる
1歳~2歳頃になると、子どもは自分の意思を表現するためにことばを使うようになります。
たとえば、子どもが犬を指差して「ワンワン」と言えば「犬がいるから見てほしい」という意味でしょうし、ごはんを指さして「マンマ」といえば、ごはんが食べたいという意味になるでしょう。
このように、意味を積極的に解釈してくれる大人の存在によって、ことばを使ったコミュニケーションが成立するようになります。
文法を理解する
ことばを使うことに慣れてきたら、次は、ことば同士の組み合わせへと発展します。
「おみず、ちょうだい」
「ママ、だっこ」
などの自分の要求を訴えることばを中心に、二つの単語を組み合わせたことば、いわゆる『二語文』が出始めるようになります。
ことばの発達においてつまずきを感じるのは、この『二語文』の段階であることが多いようです。
会話ができるようになる
ことばの発達における最後のプロセスは、「会話」です。
「遊びたいの?」「うん」
「さぁ、行くよ」「やだ!行かない!」
「何がほしいの?」「お水が飲みたいの」
など、一方的に自分の思いを伝えるだけでなく、相手の意図を受けてこちらの意図を返すような相互のやりとりができるようになります。年齢でいうと、3歳~4歳頃にあたります。
そのあとも、心身の成長・発達につれて、会話の内容や使う言葉は少しずつ複雑になり、抽象度を増していくと言えるでしょう。
知識があると見え方が変わる
ここまで、ことばを話せるようになるための3つの条件と、ことばが育つプロセスについてお話してきました。
このプロセスのどこにつまずいているかによって、適切な働きかけが変わります。
これまではことばが遅いお子さんに対して「このままでいいのかな?」と漠然とした不安に悩まされていた方も、こうした知識があると、子どもの見え方が少し変わってくるのではないでしょうか?
子どもの見え方が変わると「どんな風に働きかけたらいいだろう?」と、具体的な支援について考えられるようになりますよね。
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