大人とのやりとりに興味がない子に言葉の育ちを促す

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こんにちは。四谷学院の療育通信講座、ブログ担当のnecoです。

前回の記事では、赤ちゃんが言葉を身に付けていくプロセスをざっとご説明しました。
今回の記事では前回の復習と、大人とのやりとりに興味がない場合の働きかけのヒントについて解説していきます。


監修:計野 ちあき(言語聴覚士)
ことばの発達相談室ほっとほっと代表
都内の市や区において指導や研修を担当。言葉と発達相談室 ほっとほっとでは、言葉の発達やコミュニケーションに関しての相談を伺い、お子様の発達に合わせた指導を行っている。詳しいプロフィールはこちら

前回の復習

話すために必要な「3箇所」

○音の入り口である「耳」
○聞いた音を正しく解釈し、自分から発信しようとする「脳」
○音の出口である「口」

この3箇所がうまく機能することが、「話す」ことのポイントでしたね。

言葉の発達のプロセス

また、言葉の発達のプロセスを大きく分けると、

1.大人とのやりとりを体験する
2.単語を覚える
3.言葉でコミュニケーションをはかる
4.文法を理解する
5.会話ができるようになる

このような段階を踏んで言葉を身に付けていくのでした。

☆もっと詳しく復習したい人はこちら ⇒ 言葉が遅いと発達障害?言葉が育つプロセスとは

このうち、「耳」と「口」に器官的な問題がある場合は、お子さんの実際の様子を見ながら専門家に指導を受けることが望ましいでしょう。
55レッスンの教材だけでは丁寧な対応が難しいと考えられるため、今回は具体的なアドバイスは控えさせていただきます。

今回は、耳と口に器官的な問題がなく、言葉の遅れが脳の働きの偏りから来ていると考えられる場合について、どの段階でのつまずきにどんな働きかけが効果的か、発達のプロセスを踏まえながら考えてみましょう。

大人とのやりとりに興味がない場合

大人からの働きかけに反応を返さないお子さんは、自分の外側の世界に対する興味が狭く、大人の働きかけが意識に入ってこない状態なのかもしれません。

○話しかけても興味を示さない
○養育者の顔を見ない
○大人が指差した方を見ない
○人の笑顔に反応して笑い返すことが少ない
○自分の好きなものを見て笑うことはある
○特定のものをじっと見つめていることが多い




など

全体的に、周囲の人や物事への関心が薄いように感じられるのが特徴です。

大人のほうでは、赤ちゃんが犬を見ていれば「ワンワンだね」と声をかけますが、赤ちゃんのほうではその言葉を注意して聞くことがなかったり、犬を見ているようでいて実は犬の首輪のキラキラ光る金具だけを見ていたりするため、モノと言葉が結びつかず、なかなか言葉を覚えられません。
また、相手の存在を意識してコミュニケーションを取ろうとする意欲が薄いため、言葉を自分から発する気持ちが生まれにくいと考えられます。

自閉症の診断を受けるお子さんによく見られる状態像ですが、この様子が見られるから必ず自閉症であると決め付けることは控えましょう。

働きかけのヒント ~自分の外側の世界に気付かせてあげる~

このようなお子さんには、自分の外側に人が存在していることに気付いてもらい、人とのやりとりに楽しさを感じてもらうことを心がけましょう。

言葉だけを育てようとして、単語などを一生懸命に教えても、あまり意味がありません。
他人の存在に気付き、コミュニケーションの意欲を育てることが第一の課題であり、それが本質的に言葉の育ちにつながります。

まずは、お子さんの心の中に大人が入っていくことを目指しましょう。
お子さんが興味を持って見つめたり触ったりしているものに対して、「キラキラだね」「ワンワン、ふわふわ」など、簡潔な言葉をかけます。
あまり長い言葉かけは、お子さんの心に届かず、意識の外側を滑り落ちていってしまうことが多いようです。

この時、大人はぐっと姿勢を低くして、お子さんの視界に大人の全身を入れるようにします。
お子さんと目を合わせ、視線を捉えて、笑いかけてあげましょう。

慣れてきたら、お子さんが見ているもの・触れているものに、大人も手を触れて、少しだけ変化させてみましょう。
カーテンを見ているならばカーテンを揺らしてみる、積み木を並べているならば大人も一緒に並べてみる、といったように、ほんの少しだけお子さんの世界を揺らしてみるイメージです。

嫌がる場合は無理をせず、少しずつ少しずつ、お子さんの世界に大人が入っていき、「自分の世界の外にいる、自分以外の意図を持った存在」を意識できるように働きかけていきましょう。

働きかけのヒント ~子供の発信は極力拾う~

もしもお子さんのほうから何らかの働きかけがあったら、タイミングを逃さず、すかさず拾って投げ返してあげましょう。
たとえば、チラリとでも目を向けてくれたらすぐに目を合わせて笑いかける、「アーアー」などの意味のない音を口にしたらすぐに同じ音を大人も発音して聞かせる、といったようにです。

大人の存在を意識させ、自分の行動が相手に受け止められていることを伝えるための働きかけです。

次回のブログでは、言葉の発達のプロセス「2.単語を覚える」について、働きかけのヒントをご提案します。
それでは、また!

第1回の記事 ⇒ 言葉が遅いと発達障害?言葉が育つプロセスとは
第2回の記事 ⇒ 今ご覧のこの記事です
第3回の記事 ⇒ 言葉が出ない理由と言葉を引き出す働きかけ
第4回の記事 ⇒ 言葉が出ないまたは遅い子の語彙を広げる働きかけ
第5回の記事 ⇒ 言葉が出ないまたは遅い子に文法を教えるには
第6回の記事 ⇒ 言葉が出にくい発達障害の子に会話を教える指導例

こちらは、自閉症・発達障害の療育 四谷学院55レッスンのブログです。
55レッスンは、自閉症・発達障害のお子さんがご家庭で親御さんとご一緒に学べる療育の通信講座です。

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