こんにちは、四谷学院の生田です。
先日、「チック」と「トゥレット症候群」それぞれの特徴についてお伝えしました。
https://yotsuyagakuin-ryoiku.com/blogs/chick-ts-toha/
今日は「チック」と「トゥレット症候群」についてのよくある症状や、お子さんにチックが見られた場合どのように接していけばいいのか、ということについて詳しくお伝えしたいと思います。
目次
「チック」でよく見られる症状
チックで最も多いのは、顔面の素早い動きを繰り返すことだと言われています。
中でも、まばたきが典型的であるとされており、このように体の一部に動きがみられるものを「運動チック」といいます。他にも、声が出たり、咳払いが出るなどの症状もあり、これらは「音声チック」と言われています。そして、「運動チック」と「音声チック」の両方の症状が続くことを、「トゥレット症候群」と言います。
チックは4~6歳が最も出現しやすいとされています。大人になると、次第になくなっていくことが多いようです。
チックの事例
実際に「チック」の症状があるお子さんは、どのように過ごしているのでしょうか。
ここでは、2名のお子さんについて紹介します。
(1)まばたきチックのあるAくん
Aくんは幼稚園に通う4歳の男の子です。典型的とされる「まばたき」のチックがありました。
普段は周りから見ても気にならない程度でしたが、幼稚園での行事(お遊戯会や遠足)などが近づくと、まばたきの回数が増え、時にはギュっと固く目をつぶることも出てきました。
対応
周囲の大人たちは本人にはチックを指摘せず、なるべくAくんが緊張せずに過ごせるように配慮していました。
その後の様子
学年が上がると次第に回数が減り、卒園する頃にはもうチックは見られなくなりました。
(2)運動チック、音声チックどちらもあるBくん
Bくんは16歳の男子で、「運動チック」と「音声チック」の症状がありました。
例えば、本人の意思とは関係なく突然何度もジャンプしたり、「イー」や「ピー」という大きな甲高い声を出したりすることがありました。
このような「運動性チック」と「音声チック」の両方の症状が1年以上続いていたため、Bくんは「トゥレット症候群」であると推測されます。
また、Bくんには知的障害があり、発語があまり見られませんでした。
対応
チックの症状が出た時には、お友達とぶつかりそうになるなどの危険がない限りは、周りは指摘せずに見守る対応をとっていました。
注意すると、本人が居心地の悪さを感じたり、かえって別の動機づけ(ジャンプしたり、声を出したりすることで注目を得られる)になってしまう可能性があるためです。
その後の様子
Bくんは周囲の理解が得られ、対応方針も共有されていたため、チックが原因でトラブルになることはありませんでした。
以上、Aくん・Bくんの2名の実例をご紹介しました。それぞれ年齢やチックの症状は異なりますが、共通していたのは、周囲の大人たちがチックの特性を理解し、方針を共有していたという点です。
もしお子さんにチックと思われる症状がみられた場合は、保育園や幼稚園、学校の先生にも相談し、状況を確認しましょう。そして、そのうえでどのように対応していくのか相談できると良いでしょう。
チックの原因
子どもの様子を見ていると「何が原因なんだろう」「どうすれば止むんだろう」と深く考えてしまう方もいらっしゃるかもしれませんね。
「チック」および「トゥレット症候群」について、その原因はわかっていません。
しかし、生まれつき脳がチックを起こしやすい体質であると考えられています。また、不安や緊張、ストレスや疲れといった心理的要因が影響して、チックの症状が出やすくなるということがあるようです。
子どもにチックが見られたら
もし、お子さんにチックと思われる症状が出てきた時はどのようにして接していけばよいのでしょうか。具体的に紹介していきます。
(1)症状を観察しましょう
もしお子さんと過ごしていて、「最近、まばたきや顔をしかめることが増えたかも?」などの違和感があれば、お子さんを観察してチックと思われる症状の頻度やいつ起こるのかをチェックしてみましょう。また、保育園や幼稚園、学校の先生にも相談し、家の外での状況も確認しましょう。
頻度が高くなければ、すぐに病院等を受診する必要はないとされていますが、気になる場合はまずはかかりつけの小児科医に相談するのが良いでしょう。
(2)周りはどう接すればいいの?
チックの出現が多いとされる幼児期には、本人も周りの子どももチックを気にしていないことが多いようです。大人が指摘することでかえって本人が気にしてしまったり、自信を失ってしまったりすることもあります。指摘はせず見守り、本人がのびのびと過ごせる環境を作ってあげるようにしましょう。
(3)親としての気持ち
お子さんに「チック」が見られたとき、気にしすぎない方が良いと頭ではわかっていても、保護者の方はやはり気になってしまうかもしれません。それは、無理もないことです。
ただ、先ほども述べたように、チックの原因はストレスではなく生まれつきの脳の仕組みで、誰にでもある癖のようなものです。例えば、爪を噛んだり、頻繁に髪を触ったり、こういった癖は誰にでもあるものです。
そして、そのような癖があるからといって、その人自身が否定されるようなことは決してありませんよね。
チックも同じです。他の癖に比べて少し目立ってしまうので、目が行きがちですが、チックがあることがお子さんのすべてではないはずです。
お子さんには、他にもいいところ、素晴らしい面がたくさんあります。まずは、そこに目を向けて、長所をより伸ばしてあげるようにするといいでしょう。
そのうえで、「でも、やっぱり見ているとつらくなる、悲しくなる」という時には、家族や友人に悩み話してみましょう。知り合いに話しづらい場合は、市区町村の子育て支援センターに電話をするなどしてみてもいいでしょう。大切なことは、不安な気持ちを一人で抱え込まないことです。
~参考~
トゥレット症候群 発達障害ナビポータル
・チック NCNP国立精神・神経医療研究センター
まとめ~子どもにチックが見られたときにすべきことは?
「チック」と「トゥレット症候群」についてのよくある症例や、お子さんにチックが見られた場合どのように接していけばいいのか、ということを見てきました。
もしお子さんにチックが見られるようになったら、はじめは戸惑ってしまうかもしれませんが、チックははお子さんが大きくなるにつれ自然となくなることも多いようです。
また、チックは精神状態が安定しているときや、集中しているときには出にくくなるという報告もあります。チックが見られたときには、お子さんが心理的に安定できるようサポートしていけるといいでしょう。
このブログは、四谷学院「発達支援チーム」が書いています。
10年以上にわたり、発達障害のある子どもたちとご家庭を支援。さらに、支援者・理解者を増やしていくべく、発達障害児支援士・ライフスキルトレーナー資格など、人材育成にも尽力しています。
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