100mを9秒で走る男と発達障害のお子さんの感情表現

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こんにちは。四谷学院の療育通信講座、ブログ担当のnecoです。

 

祝!日本人初の9秒台!

陸上男子100メートルで、桐生祥秀選手が9秒98をマークしました。
日本選手が公式記録として10秒を切ったのはこれが初めてです。

いやはや、10秒だなんて、キーボードでいくつか文字を打ったらあっという間ですよ。
その間に100mも前に進めるなんて、人類の底力を感じますね。

桐生選手、おめでとうございます!!

 

100mを9秒で走らないまでも、自分なりに何かを達成すれば、人は喜びを感じますね。
一方で、発達障害のお子さんは、感情表現が苦手なことが多く、ご本人が何を感じているか、周囲の人にはわかりにくいことがあります。

今回は、発達障害のお子さんの感情表現について考えてみましょう。

感情表現って難しい!

発達障害のお子さんは感情表現が苦手、とよく言われます。
実際に、ご本人の喜怒哀楽がわかりにくいために大人からの働きかけが難しかったり、お友達同士のコミュニケーションがうまくいかなかったり、という事例を多く見聞きします。

発達障害のお子さんが感情表現を苦手とする理由はいくつか考えられます。
たとえばこちら。

見ることの苦手さ
○人の顔を見るのが苦手
○顔を見たとしても部分的にしか見ておらず、表情全体を捉えるのが苦手

考えることの苦手さ
○表情と感情を結びつけて考えるのが苦手
○感情の呼び方(嬉しい、悲しいなど)を覚えるのが苦手

心身の活動の苦手さ
○自分の感情を認識するのが苦手
○表情を作るのが苦手

など

どこに苦手さがあるかは人それぞれですが、定型発達の人にとってはごく自然なふるまいである感情表現も、発達に偏りのある人にとってはかなり難しい課題であるということを理解していただけると嬉しいなと思います。

 

感情表現を身に付けるには

それでは、感情を表現する方法を身に付けるにはどうすればよいのでしょうか。

 

人の顔を見る習慣をつける

小さな頃から、人の顔を見る練習をしましょう。
お子さんと一緒に遊んだり、抱っこしたりしながら、その子にとって心地よい体験の中で、大人と視線を交わす経験を積み重ねます
おもちゃを渡す時に大人がおもちゃに顔を近づけるなど、お子さんが見ているものの中に大人が入っていく気持ちで関わると良いでしょう。

表情と感情の呼び方を教える

まずは知識として感情の名前を教えます
笑顔の絵カードを見ながら「うれしい」、泣いている絵カードを見ながら「かなしい」など、表情と結びつけて教えてあげましょう。
適切な教材を用意しづらい場合は、通信講座もぜひご活用ください。
⇒ 誰にでもわかりやすいイラストで感情表現の練習ができる発達障害・自閉症の方向けの通信講座

自分の感情を認識させる

お子さんがその感情を味わっているであろう瞬間に、「楽しいね」「悔しいね」などと声かけし、自分の心の動きが「悔しい」と呼ばれる感情であることを伝えます
文字が読めるお子さんであれば、感情の言葉をカードに書き、自分が感じている感情を選択する方式で学習するのも良いでしょう。

感情を体験させる

そもそも、自分で感情を味わってみなければ、その感情を理解することなどできません。
嬉しさを感じたことがない人に、「笑顔だから嬉しい」などと教えても伝わるわけはありませんね。
感情は体験を通して心が揺れることから生まれます。
お子さんの心身の状態に合わせて、様々な人に会い、様々な経験を積める機会を積極的に設けましょう
より複雑な感情を体験することが、その人の人生を大きく、深く、彩り豊かなものにしてくれます。

 

その人にとって自然な感情表現を

練習を積むことで、周囲の人にわかりやすく感情を伝えられるようになると、コミュニケーションがスムーズになり、人間関係や人生経験の上でもご本人にとって得るものは大変大きいでしょう。

ただ、忘れてはいけないのは、感情表現とは本来、その人の心からの思いが自然にあふれ出てくるものであり、そのやり方は人それぞれである、ということです。

 

たとえば私が存じ上げている自閉症の方は、感情表現がわりと(かなり?)苦手です。
常に表情が変わらず、話し方も一本調子で、機械で一音ずつ録音したものをつなげてしゃべっているような声音で話されます。

でも、その方は、嬉しい時は「嬉しい」と言葉で教えてくださいます。
まるっきり無表情のまま、淡々とした声で「嬉しいです」などとおっしゃるので、慣れるまではびっくりするのですが(^ ^;)、これがこの人のやり方なんだとわかってしまえば、何ということもありません。

恐らくこの方も、表情や声音に変化をつける練習に挑戦されたことはあるのだろうと思います。
が、結局この方が成人してから採用している表現方法は「言葉のみ」で表すというもので、それはご本人や周囲の支援者の方々が試行錯誤しながら掴み取ってきた、現時点でのベストの方法なのでしょう。

発達障害の子どもたちは感情表現が苦手かもしれませんが、感情を持っていないわけではありません。
表に出ないだけで、心の中には豊かな内面世界が広がっています。
私たち大人は、その豊かさを信頼し、その子の感じ方に寄り添いながら、その子が見ている世界を一緒に歩いていきたいものですね。

 

それでは、また!

 

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