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言葉の育ちを考える2つの視点

  公開日:2017/10/04
最終更新日:2017/12/22

※この記事は約6分で読めます。

こんにちは。四谷学院の療育通信講座、ブログ担当のnecoです。

 

発達障害の子供たちについて、よく心配されるのが「言葉の育ち」。
話し始めるのが遅い、自発的な会話がほとんどない、人の気持ちを考えずにズバッとものを言ってしまう、言動が一致しない、などなど、言葉の課題は人それぞれです。
55レッスンでもたくさんの親御さんからご相談をうかがっています。

言葉の育ちには、2つの角度からの視点があります。
子供たちの言葉の育ちの様子を正しく把握するには、この2つの視点を踏まえたサポートが欠かせません。

言葉の育ちを考える2つの視点

その2つの視点とは、広さ深さ

言葉の育ちの広さとは、語彙力、単語の量をさします。
言葉の育ちの深さとは、その言葉についてどれだけ意味を身に付けているかをさします。

多くの場合、大人が把握している言葉の育ちは「広さ」についてであり、「深さ」については明確に意識されていないように思います。

 

言葉の深さが不足するとどうなるか

言葉の広さ=語彙力が不足するとどうなるかはイメージしやすいと思いますが、言葉の深さ=意味が不足するとどうなるかは少し想像しづらいですね。

たとえば、このような場合を考えてみましょう。

 

ケーススタディ
自閉症スペクトラムの小学校5年生の男の子、A君。
言葉が非常に達者で、難しい言葉も交えながらスラスラと話す。
体格が良く、堂々と話すので、年齢のわりに大人びて見える。
人の感情や言外の意図を汲み取るのが苦手。
近くの席の友人の持ち物(文房具など)をしばしば勝手に使い、何度教師に指導されても、そのつど言い訳をして責任転嫁する。
「言葉巧みに言い逃れをしている」と級友からも白い目で見られ、距離を置かれることが増えてきた。

※特定のお子さんの事例ではなく、複数のお子さんの事例を取り混ぜてわかりやすく再構成しています。

 

A君のようなケースは、指導する大人に言葉の広さ・深さの視点が必要な、典型的な事例です。
スラスラと上手に話すことができる子を見ると、大人はつい、十分な言葉の育ちがあると思いがちですが、実は、その言葉には「広さ」だけが育っていて、「深さ」が育ちきっていないことがしばしばあるのです。

A君は、「人の感情や言外の意図を汲み取るのが苦手」という特性を持っています。
これは、多くの人にとって当たり前であると思われて、暗黙のうちに運ばれているルールや事情が、彼には伝わっていない可能性があることを意味します。
お友達のものを勝手に使う行動が頻繁に見られることについても、その行動が良くないことであると理解できていない可能性を疑うべきでしょう。

教師の指導に対して言い訳をするという行動も、大人からは「言い逃れ」と見えますが、A君にとっては、「叱られたから反射的に反発した」という反応かもしれません。
言葉が得意なお子さんは、言葉で畳み掛けられるととっさにスイッチが入って、言葉で攻撃的に反発してしまうことがしばしばあります。

この場合は、言葉の争いに勝つことに意識が集中しているので、自分が使っている言葉がどれほど相手を傷つけるか、相手にどんな印象を与えるかは意識していません。
相手が伝えてくる言葉の裏にある指導の真意も伝わっていません。
ことにA君のように、物事の意味を汲み取りにくいお子さんには、教師の意図した指導はほとんど通じていないと考えた方がよいでしょう。

言葉の「広さ」だけが発揮され、「深さ」が未熟な一例です。

 

言葉の深さが未熟なお子さんへの指導例

それでは、A君にはどのように指導すればよいのでしょうか。

 

出来事の背景を説明する

他人のものを勝手に使うのはよくないこと、借りるならば一声かけて承諾を得てからにすることを、図やイラストで丁寧に解しましょう。
その時の双方の気持ちや事情など、目に見えない背景をできる限り文字で書いて表現するとわかりやすくなります。
必要ならば、正しい貸し借りの仕方をロールプレイ形式で練習するなど、ソーシャルスキルのトレーニングも行いましょう。
A君なりに道具を借りた理由や気持ちがあるはずなので、いきなり正論を押し付けるのではなく、まずはA君の気持ちを丁寧に汲み取り、寄り添いましょう。

 

人の気持ちは変化することを教える

最初は快く道具を貸してくれたかもしれないお友達も、あまり借用(しかもこの場合は無断です)が度重なると良い顔をしなくなります。
それに気づかずに借り続けようとすると、トラブルの原因になります。
人の気持ちは変化することを、場面ごとに場合分けするなどして伝えましょう。

すぐに理解することは難しくても、気づきのきっかけができればひとまずよしとし、働きかけを継続しましょう。


最初はよくてもだんだん・・・

 

周囲のお友達の心のケア

A君に悪意があって無断借用したわけではないことを丁寧に伝えてあげたいところです。
お友達にも怒りや戸惑いなど、さまざまな思いがあるはずです。
A君の思いや事情を押し付けたり、無理に理解を求めたりするのではなく、一人ひとりの気持ちを大切に受け止め、自分で気持ちを昇華させることができるよう、サポートしてあげたいですね。

 

生活スキルの練習

A君は文房具を借りることが多いようです。
必要ならば、他人から借りなくても済むよう、自分の道具を揃えて忘れずに持参することも指導しましょう。
「自分の鉛筆を使い切ってしまい(新しい鉛筆を買うという発想がなかったため)周囲にある他人の鉛筆を使った」
という事例もありました。
保護者にも状況を共有し、文房具を揃えることを家庭でも支援するとともに、生活必需品を買う・保護者に頼むといった生活スキルを練習すると良いでしょう。

 

言葉の「深さ」を育てるには

以上のような働きかけの他に、A君にとって最も大切なのは、言葉の「深さ」を育むことです。

次回のブログでは、言葉の深さを育てるための働きかけを考えてみましょう。
それでは、また!

 

次の記事 ⇒ 本質的な言葉の育ちをサポートする方法

 

 

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