言葉が出ないまたは遅い子の語彙を広げる働きかけ

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こんにちは。四谷学院の療育通信講座、ブログ担当のnecoです。

今回の記事では、言葉が出ない、言葉が遅い子どもたちに、言葉の育ちを促す働きかけを考えていきます。


監修:計野 ちあき(言語聴覚士)
ことばの発達相談室ほっとほっと代表
都内の市や区において指導や研修を担当。言葉と発達相談室 ほっとほっとでは、言葉の発達やコミュニケーションに関しての相談を伺い、お子様の発達に合わせた指導を行っている。詳しいプロフィールはこちら
第1回の記事 ⇒ 言葉が遅いと発達障害?言葉が育つプロセスとは
第2回の記事 ⇒ 大人とのやりとりに興味がない子に言葉の育ちを促す
第3回の記事 ⇒ 言葉が出ない理由と言葉を引き出す働きかけ
第4回の記事 ⇒ 今ご覧のこの記事です
第5回の記事 ⇒ 言葉が出ないまたは遅い子に文法を教えるには
第6回の記事 ⇒ 言葉が出にくい発達障害の子に会話を教える指導例

言葉の発達のどのプロセスでつまずいているかによって、適切な働きかけは変わってきます。
耳と口に器官的な問題がなく、言葉の遅れが脳の働きの偏りから来ていると考えられる場合について、どの段階でのつまずきにどんな働きかけが効果的か、発達のプロセスを踏まえながら考えてみましょう。

言葉の発達のプロセス

言葉の発達のプロセスを大きく分けると、

1.大人とのやりとりを体験する
2.単語を覚える
3.言葉でコミュニケーションをはかる
4.文法を理解する
5.会話ができるようになる

このような段階を踏んで言葉を身に付けていくのでしたね。

詳しく復習したい方はこちら

 
前回は、2つ目のプロセスについて、言葉が出ない主な理由と、お子さんから言葉を引き出す働きかけをご提案しました。
今回は、3つ目のプロセスについて、言葉が出始めた子供たちのコミュニケーションを広げるための働きかけを考えてみましょう。

単語が出始めたお子さんへの働きかけ

「ワンワン(=犬がいるよ)」
「まんま(=ご飯が食べたい)」

など、周囲の物事や自分の要求を表現するために単語を使い始めたお子さんには、「単語を一つ足して答える」働きかけをお勧めします。
たとえば、このようにです。

大人の対応例(例)
「ワンワン、かわいいね」 ・・・ 「ワンワン」 + 「かわいい」
「マンマ、食べたいのね」 ・・・ 「マンマ」 + 「食べたい」

 

いま理解している単語を土台にして、新語を一つだけ追加することで、新しい言葉への理解を育てる働きかけです。

 

言葉は一つだけ、が原則!

「かわいいワンワンだね、茶色くてふわふわだね」などと話しかけると、「ワンワン」に対して、「かわいい」「茶色い」「ふわふわ」と、三つの表現を追加したことになりますから、お子さんによっては混乱を招いてしまいます。

こうした場合は、「ワンワンかわいいね」「ワンワン茶色だね」「ワンワンふわふわだね」などと、いろいろな表現を伝えて、覚えるチャンスを広げていくことが大切です。

新しい言葉は一つだけというのがポイントですね。

なかなか単語が増えなくても焦らずに

お子さんの「ワンワン」に対して、大人が「ワンワン、かわいいね」と返していると、次第にお子さんも「かわいいね」と復唱するような場面が増えてきます。
お子さんの中に「かわいい」という語彙が芽生えた瞬間です。

ワンワンだけでなく、猫もかわいいね、うさぎもかわいいね、ピンクのリボンもかわいいね、と表現を続けていると、少しずつお子さんの中に「かわいい」の概念が形成されていき、「かわいい」を使いこなせるようになっていくわけです。

一方、大人が丁寧に働きかけを続けていても、なかなか言葉が増えないお子さんもいらっしゃいます。
その場合も決して焦らず、お子さんの頭の中のコップに言葉を溜めていくために、前述の「単語を一つ足して答える」働きかけを諦めずに続けていただければと思います。
並行して、保護者が楽しく話し合う様子を見せてあげたり、絵本を読み聞かせたり、ご家族の日常会話の中に自然とお子さんを参加させ、反応を見るなど、ご家庭の生活の中で無理なく働きかけられる言葉かけを続けましょう。
遊びの中で絵カード等を使って単語を覚えることを楽しいと思うお子さんもいらっしゃるでしょうね。

頭の中のコップに言葉が溜まれば、いつか自然にあふれ出すようになりますよ。

自閉症のお子さんには意図の理解を

自閉傾向のお子さんは、言葉の使い方が本質的に異なるお子さんもいらっしゃいます。
自分や他人の「意図」の意識が難しいことが、言葉の自然な習得の壁になります。

「意図」とは、人が言葉を使う時に、その言葉にこめた思い、と言い換えられます。
たとえば人が犬を指差して「ワンワン」と言えば、「私はこの犬に興味を惹かれた、この犬をあなたにも見てほしい」という「意図」が隠れていることになりますね。
発達に偏りがない人にはごく自然に汲み取れる「意図」ですが、自閉傾向の人はこの「意図」を感じ取ることがもともと苦手です。

自閉症の子供たちによく見られる「オウム返し」は、ここから来ています。
大人が言った単語を正確に復唱していても、単に音を繰り返しているだけで、その言葉によって何かを表現しようとしている大人の「意図」を感じ取ることはできていません。

指導する時は、単語そのものを教えるだけでなく、場面と結びつけて、意図を教えることを心がけましょう。

意図を教えるとはどんなふうにすればいいのか?
ご家庭での指導に迷われる場合は、自閉症・発達障害のお子さんの家庭療育システム55レッスンがお力になれるかもしれません。
家庭学習を通して、自閉症のお子さんに応じたやりとりの体験を蓄積してもらえるはずです。

次回のブログでは、言葉の発達のプロセス「4.文法を理解する」について、働きかけのヒントをご提案します。
それでは、また!

第1回の記事 ⇒ 言葉が遅いと発達障害?言葉が育つプロセスとは
第2回の記事 ⇒ 大人とのやりとりに興味がない子に言葉の育ちを促す
第3回の記事 ⇒ 言葉が出ない理由と言葉を引き出す働きかけ
第4回の記事 ⇒ 今ご覧のこの記事です
第5回の記事 ⇒ 言葉が出ないまたは遅い子に文法を教えるには
第6回の記事 ⇒ 言葉が出にくい発達障害の子に会話を教える指導例

言葉の育ちに困難のある自閉症発達障害のお子さんに、発達のプロセスに基づいて言葉・会話を指導したいなら、55レッスンの資料をぜひ一度ご覧ください。
詳しくはホームページをご覧ください。受講前のご相談も受け付けています。


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