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言葉が出ない理由と言葉を引き出す働きかけ

  公開日:2017/10/25
最終更新日:2018/11/23

※この記事は約8分で読めます。

こんにちは。四谷学院の療育通信講座、ブログ担当のnecoです。

 

言葉が出ない、言葉が遅い子供たちに、言葉の育ちを促す働きかけを考える連載記事です。

第1回の記事 ⇒ 言葉が遅いと発達障害?言葉が育つプロセスとは
第2回の記事 ⇒ 大人とのやりとりに興味がない子に言葉の育ちを促す
第3回の記事 ⇒ 今ご覧のこの記事です
第4回の記事 ⇒ 言葉が出ないまたは遅い子の語彙を広げる働きかけ
第5回の記事 ⇒ 言葉が出ないまたは遅い子に文法を教えるには
第6回の記事 ⇒ 言葉が出にくい発達障害の子に会話を教える指導例

言葉の発達のどのプロセスでつまずいているかによって、適切な働きかけは変わってきます。
耳と口に器官的な問題がなく、言葉の遅れが脳の働きの偏りから来ていると考えられる場合について、どの段階でのつまずきにどんな働きかけが効果的か、発達のプロセスを踏まえながら考えてみましょう。

言葉の発達のプロセス

言葉の発達のプロセスを大きく分けると、

1.大人とのやりとりを体験する
2.単語を覚える
3.言葉でコミュニケーションをはかる
4.文法を理解する
5.会話ができるようになる

このような段階を踏んで言葉を身に付けていくのでしたね。
前回は、1つ目のプロセスについて、大人とのやりとりに興味がない場合の働きかけをご提案しました。
今回は、2つ目のプロセスについて、お子さんから言葉を引き出す働きかけを考えてみましょう。

 

言葉が出ない主な理由

言葉の遅れには、いくつかの理由が考えられます。


◯発達がゆっくり(知的障害など)
◯発達に偏り(自閉傾向や多動・注意欠陥傾向など)
◯単純に言葉が遅い
など

※この他にも、脳性まひ等の脳機能障害も言葉の遅れの理由として考えられますが、この場合は専門の医師にかかっておられる可能性が当然に高いこと、脳機能障害に起因する協調性運動障害による発話困難は専門家の指導が望ましいことから、今回の記事では割愛いたします。

人の頭の中には、言葉を溜めるコップがあると想像してみてください。
大人が赤ちゃんに言葉をかけると、赤ちゃんの頭の中のコップに、その言葉が溜まっていきます。
やがてコップいっぱいに言葉が溜まると、コップから言葉があふれ出します。
この、あふれた言葉が、赤ちゃんの口から出る言葉です。

つまり、人が言葉を話すまでには、頭の中のコップにたくさんの言葉を聞き溜めていく必要があるわけですが、このコップへの言葉の溜まり方やあふれ方に人それぞれの差があり、それが言葉の遅さにつながっています。

 

発達がゆっくり

発達がゆっくりで、暦年齢よりも発達年齢が幼いお子さんは、頭の中のコップの口が狭かったり、途中の通り道が狭かったり、コップの出口が狭かったりします。
コップの中に十分な言葉が溜まるまでには、大人がたくさんたくさん言葉をかけてあげる必要があります。
時間をかけて丁寧に教えながら、ご本人のペースでゆっくりと言葉を引き出していきましょう。

 

発達に偏り

発達に偏りがあるお子さんは、大人の話に興味を持ちにくい(自閉傾向の方に多い)、気が散りやすく大人の話に集中しにくい(多動・注意欠陥傾向の方に多い)、などの様子を見せることがあります。
この場合、頭の中のコップにフタがついているとイメージすると良いでしょう。

大人の話に興味を持たないお子さんは、フタを通り抜けてコップの中に入ってくる言葉が少なくなります。
気が散りやすいお子さんは、次から次へと興味の対象が移っていくので、大人の話など聞いていられず、当然コップの中に入る言葉も少なくなります。
子供たちのコップのフタを開けて言葉を中に注いであげるために、一人ひとりに合わせた丁寧な働きかけが求められます。

 

単純に言葉が遅い

言葉以外の心身の発達に問題がなく、耳にも口にも器官的な問題がないのであれば、「単純に言葉が遅い」可能性も考えられます。
「発達性言語障害」という診断が下ることもありますが、ごく大雑把に言って、言葉の発達「だけ」が遅い子供たちです。
2~3歳頃で単語が、3~4歳頃で二語文が出はじめ、4歳過ぎから言葉が急激に増えて、小学校に上がる頃までには周囲の子供たちとほとんど変わらないくらいまで話せるようになる、といった発達プロセスをたどることが多いです。
コップの中に言葉は十分に溜まっているのだけれども、言葉がなかなかあふれ出てこないというイメージです。
お子さんの言葉の機能が成熟するのを信頼してゆっくりと待つ気持ちも大切です

 

働きかけのヒント ~たくさん話しかける~

いろいろなことを話しかけて、頭の中のコップにたくさんの言葉を溜めることが第一です。
絵本の読み聞かせをしたり、お子さんが興味を持っているものの名前を教えたり、周囲の物事を言葉で描写したりなど、たくさんの温かな言葉でお子さんを包んであげましょう。

時々、話しかけることに必死になって、保護者がくたびれてしまうご様子をうかがうこともあります。
言葉とは本来、人が何かを体験し、心が揺れ動いた時に、自然にこぼれ出てくるものです。
大人が無理にひねり出した言葉をお子さんに投げかけても、お子さんの心には届きにくいでしょう。
お母さん・お父さんご自身の心の揺らぎも大切にしてあげてくださいね。

 

自閉症のお子さんには声かけを制限したほうが良いことも

自閉症のお子さんは、五感に届く刺激(周囲に流れる音・光・色・においなど)を受け取る方法が独特で、特定の感覚刺激に弱いことがしばしばあります。
たとえば定型発達のお子さんには楽しい絵本の読み聞かせも、自閉症のお子さんにとっては「絶え間なく流れる音」としか認識されないことも。
大人が外国語の朗読やお経を聞かされているのと同じようなもので、音が苦手なお子さんの場合は、絵本が不快や不安にもつながりかねません。

お子さんが落ち着かない様子を見せる時は、声かけをぐっと絞って、「単語や擬音・擬態語のみ」で話しかけてみるのも一つの手です。
お子さんが車を見ていたら「くるま」、揺れるカーテンを見ていたら「カーテン、ひらひら」などと、できるだけシンプルにそのものを表現しましょう。

 

働きかけのヒント ~絵カード等で単語を教える~

頭の中のコップの間口が狭かったり、かたくフタが閉まっていたりするお子さんは、耳から言葉を聞き溜めることがなかなかうまくいきません。
この場合は、絵カード等を使って単語を教えてあげることも効果的です。

言葉を話させようと大人が必死になると、お子さんへの関わりに何かと無理が出ます。
最初からあれもこれもと教えようとせず、お子さんが興味を持っているものを中心に、楽しく学習することを心がけていただくとよいでしょう。

 

発達障害のお子さんには特性に合わせた働きかけを

自閉症のお子さんは、絵カードで単語を覚える学習が得意な方が多くいらっしゃいます。
目に見える絵カードとそれに対応する単語とを1対1で覚えるという学習は、構造が単純でわかりやすいからです。
一方で、この学習だけに頼ってしまうと、絵カードを見せた途端にその単語を言うが、実際のコミュニケーションで言葉を使うことはできないといったような、アンバランスな理解を育ててしまう可能性があります。
単語の学習と並行して、前回の記事「大人とのやりとりに興味がないお子さんへの対応例」でご紹介したように、本質的なコミュニケーションの意欲をじっくりと育ててあげましょう。

多動・注意欠陥のお子さんは、ただ単語カードを見せてもなかなか学習に集中しないことが多いでしょう。
気が散らないように学習環境を整える、お子さんが興味を持てる事柄に関連づけて教える、ゲーム形式で楽しく取り組む、学習と適切なインセンティブ(報酬、ご褒美)を結びつける、など、ご本人が学習に前向きになれるような仕組みを丁寧に工夫しましょう。

 

ご家庭でのご対応が難しいとお感じの場合は、自閉症・発達障害のお子さんの家庭療育システム55レッスンがお力になれるかもしれません。
お子さんに合うかどうか、ぜひ一度確かめてみてくださいね。

 

働きかけのヒント ~楽しさで意欲を引き出す~

おしゃべりができるようになる前の赤ちゃんが、アーアー、ダッダッなど、意味のない音を口にしているのを耳にされたことがあるでしょう。
この意味のない音を喃語(なんご)と呼びます。
もしお子さんが喃語を口にしたら、すかさず同じ音を大人も口にして、お子さんに聞かせてあげましょう。
自分が口にした音が大人に届いたことに気付かせ、自分が口にする音に意識を向けさせる働きかけです。
自分が何かを言えば大人が応えてくれるとわかれば、意図を持って言葉を口にしようとする意欲が生まれてきます。

喃語だけでなく、大人を見る目線、大人の興味を惹こうとする仕草など、お子さんが発信するものは全て大切なチャンスです。
一つひとつ丁寧に応え、大人とのやりとりに楽しさを感じられるように働きかけましょう。

「楽しさ」は、言葉を使うための大切なエンジンです。
楽しさによって、頭の中のコップがわくわくと揺さぶられて、言葉があふれやすくなるとイメージしてください。
ご本人にとって楽しいと感じられるやりとりを通してコミュニケーションの意欲を引き出すことが、言葉を使うための大切な土台になります。

 

 

次回のブログでは、言葉の発達のプロセス「3.言葉でコミュニケーションをはかる」について、働きかけのヒントをご提案します。
それでは、また!

 

第1回の記事 ⇒ 言葉が遅いと発達障害?言葉が育つプロセスとは
第2回の記事 ⇒ 大人とのやりとりに興味がない子に言葉の育ちを促す
第3回の記事 ⇒ 今ご覧のこの記事です
第4回の記事 ⇒ 言葉が出ないまたは遅い子の語彙を広げる働きかけ
第5回の記事 ⇒ 言葉が出ないまたは遅い子に文法を教えるには
第6回の記事 ⇒ 言葉が出にくい発達障害の子に会話を教える指導例

 

 

言葉の育ちに困難のある自閉症発達障害のお子さんに、発達のプロセスに基づいて言葉・会話を指導したいなら、55レッスンの資料をぜひ一度ご覧ください

 

 

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