監修:計野 ちあき(言語聴覚士)
ことばの発達相談室ほっとほっと代表
都内の市や区において指導や研修を担当。言葉と発達相談室 ほっとほっとでは、言葉の発達やコミュニケーションに関しての相談を伺い、お子様の発達に合わせた指導を行っている。詳しいプロフィールはこちら。
こんにちは。四谷学院の療育通信講座、ブログ担当のnecoです。
多くの保護者が我が子の発達障害を疑うきっかけが「言葉が遅い」こと。
3歳頃までの子供たちの発達は個人差が極めて大きいものです。
言葉がなかなか出ないからといって、すぐに発達障害を心配する必要はありません。
一方で、適切な働きかけをすれば、子供たちの言葉を広げてあげるきっかけになることも。
今回からいくつかに分けて、「言葉が遅いこと」について考えてみましょう。
目次
言葉を話すための心身の育ち
言葉が話せるようなるためには、心身の発達・成長が、以下の3つの条件を満たしている必要があります。
○聞いたことを頭で理解し、コミュニケーションをとろうとする
○口で話せる
人が言葉を覚える時は、まず耳で周囲の大人たちが話す言葉を聞きます。
そうして聞き溜めた音を、本人の意思で口に出すことが「話す」ことの始まりです。
ですから、
音の入り口である「耳」
聞いた音を正しく解釈し、自分から発信しようとする「脳」
音の出口である「口」
この3箇所がうまく機能することが、「話す」ことの身体的なポイントになります。
従って、言葉が遅い、なかなか出ない、というお子さんには、この3箇所のどこかにつまずきがあると仮定して様子を見守ると良いでしょう。
働きかけのヒントがきっと見つかるはずです。
耳と口の器官的な問題
高い音が聞こえにくい、舌が動かしにくいといったように、耳や口に器官的な問題がある場合、専門的な治療・指導が必要になります。
直接お子さんの様子を見て診断する必要がありますので、ぜひ一度、専門医に相談されることをお勧めします。
突然大きな音を立ててもピクリともしない・・・
高い音が聞き取りにくいようだ・・・
中耳炎の後、声をかけても反応が悪くなったような気がする・・・
[/speech_bubble] [speech_bubble type=”std” subtype=”L1″ icon=”2.jpg” name=”口の使い方が苦手?”]口呼吸が多い・・・
よだれが多い・・・
ものを飲み込むのが苦手だ・・・
特定の音の発音が難しいようだ・・・
[/speech_bubble]
こんな時はぜひ専門家に相談しましょう。
聞いたことを理解し、発信しようとする「脳」
では最後の一箇所、「脳」を考えてみましょう。
人は、以下に述べるような順番で言葉を身に付けていきます。
このうちのどこかのプロセスにつまずきがある場合、脳の働きに何らかの偏りがあるのかもしれません。
1.大人とのやりとりを体験する
言葉を話せない乳幼児も、泣き声、身振り、ジェスチャー、指差し、視線などで大人とやりとりをしています。
赤ちゃんはまず、自分が笑うと相手も笑う、自分が泣くとおっぱいをもらえる、といったように、自分の何らかの発信が相手を動かすことに気付きます。
やがて、相手の表情や態度を気にかけるようになり、意思疎通を図ろうとする意欲が生まれてきます。
言葉を話すための大前提となるのは、このコミュニケーションの意欲です。
2.単語を覚える
身の回りのものに興味を持ち始めた赤ちゃんは、次第に、ものには名前があることを学びます。
たとえば赤ちゃんが犬を指差した時に「ワンワンがいるね」、車のおもちゃで遊んでいる時に「ブーブーね」など、赤ちゃんの周囲の大人は絶えず赤ちゃんに声かけをしています。
この無数の声かけの中から、赤ちゃんは、どうやらあれはワンワンというらしい、これはブーブーというらしい、と理解しはじめます。
まずはなんとなく大きなカタマリとして名詞を覚え、次により細かい名詞を理解します。
たとえば、最初は四つ足の動物を、犬も猫もそれらしいものをみなまとめて「ワンワン」と呼んでいたものが、やがて「うちのジョン」と「隣のポチ」を明確に区別できるようになる、といったようにです。
さらに、動詞、性質を表す言葉(色や大小など)、形容詞などに理解は進み、少しずつ細分化され、モノと言葉を通した象徴的な概念が育っていきます。
3.言葉でコミュニケーションをはかる
言葉が広がってくると、やがて、大人との相互のやりとりの中で、自分の意思を表現するために言葉を使うようになります。
たとえば、赤ちゃんが犬を指差して「ワンワン」と言えば、「犬がいるから見てほしい」という意味でしょうし、ご飯を指差して「マンマ」といえば、ご飯が食べたいという意味になるでしょう。
意味を積極的に解釈してくれる大人の存在によって、言葉を使ったコミュニケーションが成立するようになります。
4.文法を理解する
言葉を使うことに慣れてくると、言葉を組み合わせて使うようになります。
「おみず、ちょうだい」
「ママ、だっこ」
など、自分の要求を訴える言葉を中心に、二つ以上の単語を組み合わせた言葉が出始めます。
トライアンドエラーを繰り返しながら、正しい文法を自然と身に付けていきます。
5.会話ができるようになる
やがて、大人との簡単な受け答えができるようになります。
「○○したいの?」「うん」
「さあ、行きましょう」「やだ!行かない!」
「何がほしいの?」「お水が飲みたいの」
などなど、
一方的に自分の思いを伝えるだけでなく、相手の意図を受けてこちらの意図を返す相互のやりとりができるようになり、コミュニケーションが深まります。
そして、心身の成長・発達につれて、会話の内容や使う言葉は少しずつ複雑になり、抽象度を増していくのです。
これが、言葉が育つプロセスです。
このプロセスのどこにつまずいているかによって、適切な働きかけが変わってきます。
次回は、つまずきごとの働きかけの例を見ていきましょう。
それでは、また!
第1回の記事 ⇒ 今ご覧のこの記事です
第2回の記事 ⇒ 大人とのやりとりに興味がない子に言葉の育ちを促す
第3回の記事 ⇒ 言葉が出ない理由と言葉を引き出す働きかけ
第4回の記事 ⇒ 言葉が出ないまたは遅い子の語彙を広げる働きかけ
第5回の記事 ⇒ 言葉が出ないまたは遅い子に文法を教えるには
第6回の記事 ⇒ 言葉が出にくい発達障害の子に会話を教える指導例
こちらは、自閉症・発達障害の療育 四谷学院55レッスンのブログです。
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そんな思いをお持ちの保護者様は、ぜひ一度、HPをご覧ください。
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このブログは、四谷学院「発達支援チーム」が書いています。
10年以上にわたり、発達障害のある子どもたちとご家庭を支援。さらに、支援者・理解者を増やしていくべく、発達障害児支援士・ライフスキルトレーナー資格など、人材育成にも尽力しています。
支援してきたご家庭は6,500以上。 発達障害児支援士は2,000人を超えました。ご家庭から支援施設まで、また初学者からベテランまで幅広く、支援に関わる方々のための教材作成や指導ノウハウをお伝えしています。
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