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コラム

自閉症スペクトラムのお子さんの感情表現について基本的な考え方と指導方法

自閉症の子どもの感情表現

こんにちは。四谷学院療育講座「55レッスン」担任の瀧本三輪子です。

自閉症スペクトラムをはじめとする発達障害のお子さんは、感情表現が苦手なことが多く、ご本人が何を感じているか、周囲の人にはわかりにくいことがあります。
実際に、ご本人の喜怒哀楽がわかりにくいために大人からの働きかけが難しかったり、お友達同士のコミュニケーションがうまくいかなかったり、という事例を多く見聞きしますし、55レッスンでもよくご相談をいただきます。

コミュニケーションに悩みを抱えているのは子どもたちだけではありません。
「コミュ障」という言葉が、本来の意味を超えて(多分に自嘲を込めて)広く使われるようになっていることからもわかるように、大人たちも、近年の高度で複雑なコミュニケーション様式に対応しきれていないことが多いように思います。

発達障害のお子さんにコミュニケーションスキルの練習方法をご提案していると、親御さんから
「実は私もコミュニケーションが苦手で・・・」
「自分の気持ちを素直に表現できないんです」
といったお話を伺うこともちらほら。

そこで今回は、発達障害のお子さんの感情表現について考えてみます。
同時に、私たち大人にとってのコミュニケーションについても考えを深める機会になればと思います。

感情表現って難しい!

発達障害のお子さんがなぜ感情表現を苦手とするのか、発達の特性からいくつかの理由が考えられます。

<見ることの苦手さ>

  • 人の顔を見るのが苦手
  • アイコンタクトを取る習慣がない
  • 顔を見たとしても部分的にしか見ておらず、表情全体を捉えるのが苦手

 

人の顔は他のものとは異なる存在感を持ちます。特に自閉症のお子さんに目立つことですが、人の顔を見ることに不快・不安の念を抱く方は少なくありません。また、発達障害のお子さんは興味が限定されていることが多く、自分の興味のないことには文字通り見向きもしません。つまり、自分にとって苦手な対象物である顔を、積極的に見ようとするお子さんは少ないのです。

そのため、定型発達の人が赤ん坊の頃から自然と養育者の顔を見ながら育つのと比べると、発達に偏りのある人は顔を見る体験が圧倒的に不足します。私たちは表情を通して感情表現をしますので、顔を見ることが少ない発達障害の子どもたちは、大人の感情表現を見る体験も不足し、コミュニケーション手段としての感情表現を身に着ける機会が少なくなります。

さらに、障害特性によっては、視野が狭い、見るものが部分的、見るもの同士を結び付けられない、といった、情報入力と情報整理の力に独特さを持つこともあります。
私たちが人の顔を見る時は、目のあたりを中心に見ながら、顔全体を視野に収めていますね。ところが発達障害のお子さんは、(人にもよりますが)たとえば顔のホクロや眼鏡のきらめきだけが強く印象に残ったり、しゃべっている人の唇の動きだけが意識に飛び込んで来たり、といったように、大人が思うのとは違った受け取り方をしていることがあります。
ですから、お子さんが大人の顔に目を向けていたとしても、実はこちらが思うようには「見ていない」可能性もある、ということを理解しておく必要があります。

 

 

<考えることの苦手さ>

  • 表情と感情を結びつけて考えるのが苦手
  • 表情が意味するものを受け取るのが苦手
  • 感情の呼び方(嬉しい、悲しいなど)を覚えるのが苦手

 

特に自閉症のお子さんは、目に見えるものの細部を見る力が大変強いことが多いです。その反面、目に見えないものの存在を想像し理解することが苦手な人が少なくありません。目に見えない「感情」の存在を理解し認識すること、刻一刻と変化する感情を捉え続けることは、長い時間をかけて練習するべき課題となります。
表情全体の繊細な変化を受け取ることも難しいスキルです。表情に意味があることを理解しても、「今この人がしているこの表情がどんな意味を持っているか」を瞬間的に判断するためには、かなりの練習を要します。
笑顔のイラストを見れば「笑顔」と認識できるけれど、実際に人が笑っているところを見て笑顔かどうかを判断することは難しい、という方もいらっしゃいます。人の表情にはそれほど繊細な情報が含まれています。定型発達の人には意識に上らないようなこの微細な違いが、発達障害の人にはハッキリ「見えて」いて、それが表情の理解や感情との結びつきを「見えにくく」してしまうのでしょう。

知的な発達段階によっては、嬉しい、悲しい、などの感情の呼び方を覚えにくかったり、シンプルな喜怒哀楽はわかるけれど、悔しい、恥ずかしい、などのやや複雑な感情は理解しにくかったり、といったこともあります。

 

 

<心身の活動の苦手さ>

  • 自分の感情を認識するのが苦手
  • 表情を作るのが苦手

 

目に見えない感情を理解するのが苦手という特性は、自分の感情を認識する場面でも現れます。たとえば「手を切ったら血が出た」という因果関係は具体的でわかりやすいですが、「お友達に仲間外れにされて悲しい」という因果関係はそうわかりやすくありません。なんとなくモヤモヤとした不快な気分を感じているけれども、それが「悲しい」と呼べる感情であることを認識できないことがあります。感情がわからなければ、適切に表現することは不可能です。

また、身体の筋肉を動かす力に弱さがあると、口角を上げる、目を開く、眉を上げるなど、表情を作る筋肉をうまく動かせないこともあります。

 

 

 

どこに苦手さがあるかは人それぞれですが、定型発達の人にとってはごく自然なふるまいである感情表現も、発達に偏りのある人にとってはかなり難しい課題であるということを理解していただけると嬉しいなと思います。

感情表現を身に付けるには

それでは、感情を表現する方法を身に付けるにはどうすればよいのでしょうか。

 

<人の顔を見る習慣をつける>

小さな頃から、人の顔を見る練習をしましょう。
人の顔は不快なものではない、という安心感を育むために、お子さんと一緒に遊んだり、抱っこしたりしながら、その子にとって心地よい体験の中で大人と視線を交わす経験を積み重ねます。
おもちゃを渡す時に大人がおもちゃに顔を近づけて目を合わせるなど、お子さんが見ているものの中に大人が入っていく気持ちで関わると良いでしょう。

 

<表情と感情の呼び方を教える>

まずは知識として感情の名前を教えます。
笑顔の絵カードを見ながら「うれしい」、泣いている絵カードを見ながら「かなしい」など、表情と結びつけて教えてあげましょう。

 

<自分の感情を認識させる>

お子さんがその感情を味わっているであろう瞬間に、「楽しいね」「悔しいね」などと声かけし、自分の心の動きが「悔しい」と呼ばれる感情であることを伝えます。
文字が読めるお子さんであれば、感情の言葉をカードに書き、自分が感じている感情を選択する方式で学習するのも良いでしょう。

 

<感情を体験させる>

そもそも、自分で感情を味わってみなければ、その感情を理解することなどできません。悔しさを感じたことがない人に、「勝負に負けて悔しい」などと教えても、伝わるわけはありませんね。
感情は体験を通して心が揺れることから生まれます。お子さんの心身の状態に合わせて、様々な人に会い、様々な経験を積める機会を積極的に設けましょう。
より複雑な感情を体験することが、人生をより大きく、深く、彩り豊かなものにしてくれます。

 

ノンバーバルなコミュニケーションに捉われない

ノンバーバルな表現方法

周囲にわかりやすく自分の感情を伝えられるようになると、コミュニケーションがスムーズになり、人間関係や人生経験の上でもご本人が得るものは大変大きいでしょう。

私たちは一般的に、表情、身振り、声音などの、言語とは異なる=ノンバーバルな手段によって多くの感情を表現します。「目は口ほどにものを言い」ということわざの通り、言葉で嘘をつくのは簡単ですが、ノンバーバルな部分で嘘をつくことはなかなか難しく、それゆえにノンバーバルなコミュニケーションは直感的に感情を伝え合うために非常に効果的な手段です。お子さんにとって無理がなければ、表情や身振りなどのノンバーバルな表現方法を練習すると、社会的な生活はよりスムーズになるでしょう。

ただ、忘れてはいけないのは、感情表現とは本来、その人の心からの思いが自然にあふれ出てくるものであり、そのやり方は人それぞれである、ということです。

たとえば私が存じ上げている自閉症の方は、感情表現がわりと(かなり?)苦手です。
常に表情が変わらず、話し方も一本調子で、機械で一音ずつ録音したものをつなげてしゃべっているような声音で話されます。
でも、その方は、嬉しい時は「嬉しい」と言葉で教えてくださいます。よほど嬉しくなければわざわざおっしゃることもないので、この方が「嬉しい」と話される時はとても特別な時です。
まるっきり無表情のまま、淡々とした声で「嬉しいです」などとおっしゃるので、最初はびっくりするのですが、これがこの人のやり方なんだとわかってしまえば、何ということもありません。

恐らくこの方も、表情や声音に変化をつける練習に挑戦されたことはあるのかもしれません。が、結局この方が採用している表現方法は「言葉のみ」で表すものでした。ご本人や周囲の支援者の方々が試行錯誤しながら掴み取ってきた、現時点でのベストの方法なのでしょう。

この方のように、ノンバーバルなコミュニケーションに難しさを感じる場合は、定型発達の人の一般的なコミュニケーション方法に捉われず、自分にとって受け入れやすい方法を模索することが大切です。
仮に表情や声音で感情を表現することができなくても、言葉や文字で表現できれば、その人の思いは十分に伝わります。目で語り合うような、直感的な瞬時のやりとりはできないかもしれませんが、丁寧に時間をかけて、素直に本当の自分の気持ちを伝え合うことは、誰にでもできるのですから。

その人にとって自然な感情表現を

感情表現が苦手だと感じる人の中に、たとえば面と向かって話すことは苦手でも、気持ちを書いてメールで伝えることはできる、そんな人がいないでしょうか。もし、そのことに何らかの引け目を感じているようであれば、もしかするとその人は、表情・身振り・声音などのノンバーバルな表現方法こそが一番のコミュニケーションだという考え方に捉われているのかもしれません。

話せないなら書けばいい。
書けないならカードに書いたものを提示すればいい。
音声を再生して聞いてもらうのもいい。今では便利なスマホアプリもたくさんあります。

一人ひとりが、自分にとってのベストな表現方法を掴むということを目標にすれば、コミュニケーションは今よりもっと寛大に、シンプルに、本質的になり、より豊かな広がりを持つようになるのではないでしょうか。
そんなふうに、自分なりの感情表現があっていい、ということが当たり前の世の中になれば、いま世間にあふれている無数の「コミュ障」の皆さんの、ざっくり7~8割くらいは、ご自身をコミュ障とは考えなくなるんじゃないかな~と思っているのですが、、、
どんなものでしょうね?(^ ^)


発達障害の子どもたちは感情表現が苦手かもしれませんが、感情を持っていないわけではありません。
表に出ないだけで、心の中には豊かな内面世界が広がっています。
私たち大人は、その豊かさを信頼し、その子の感じ方に寄り添いながら、その子が見ている世界を一緒に歩いていきたいものですね。


それでは、また。

 

 

 

 

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