◆LD(学習障害)とは
学習障害はLDと略されることもあり、Learning DisordersまたはLearning Disabilitiesの略語とされています。全般的な知的発達に遅れはなく、聞く、話す、読む、書く、計算する、推論するなどのうち、特定の能力の習得や使用に著しい困難がある状態を言います。的確な診断・検査が必要で、一人ひとりの状況に応じた対応が求められます。ADHD・高機能自閉症などを伴う場合には、それらも考慮したサポートが必要で、家庭・学校・医療関係者の連携が欠かせません。
※最新のDSM-5において、LD(学習障害)は「限局性学習症あるいは限局性学習障害(Specific Leaning Disorder)」に名称が変更になりました。
◆LD(学習障害)の診断
学習障害が疑われるときには、中枢神経系の器質的な疾患の有無を明らかにするために、医学的な評価も重要です。
これまでの発達歴・既往歴などを確認し、必要に応じて頭部画像検査などが行われます。また心理学的検査によって視覚認知機能や音韻認識機能を知ることも重要です。
学習障害の中で最も多いディスレクシア(読字障害)では、文字を音に変換するための音韻操作や読みの速さの能力をみることが支援につながるため、専門家(小児神経科医師など)と相談することが必要になります。ADHDや広汎性発達障害がある場合は、学業不振がそれらに伴うものかどうか見極めが必要となります。家庭と学校そして医療関係者の連携がとりわけ重要です。
学習障害LDの子どもたちが見せる様子
LDの子どもたちに多く見られる苦手さは、大きく4つに分けることができます。 どんな様子が見られるのか、具体例を挙げてみましょう。
1.読むことが苦手
- 意味で区切ることができず、1文字ずつ読む
- 文字や行を飛ばして読む
- 形の似た文字を読み間違う
- 拗音(ゃゅょ)、促音(っ)など特殊音節を発音できない
2.書くことが苦手
- 形の似た文字や漢字を書き間違う
- 漢字のへんとつくりを間違う
- 意味や音が似ている漢字を間違う
- 鏡文字を書く
- 句読点を忘れる
- 板書を書き写せない
- 文字の大きさがバラバラ
- マスや罫線からはみ出す
- 文字のバランスが悪い
3.聞くこと・話すことが苦手
- 聞き間違いが多い
- 筋道立てて話すことができない
- 言いたいことを言葉で表現できない
- 相手の言うことが理解できない
- 内容は近いが聞いた通りに書けない
4.計算や推論が苦手
- 指を使わないと計算できない
- 位取りを間違う
- 文章問題が解けない
- 図形・表・グラフなどが理解できない
- 見直し、作業時間の配分などができない
苦手さの背景にある障害特性
子どもたちを適切にサポートするためには、その子の苦手さがどんな障害特性から来ているのかを正しく知ることが欠かせません。
一つひとつの苦手さの背景にどんな障害特性が隠れているのか、順番に見ていきましょう。
1.読むことが苦手 の背景にある障害特性
「読むことが苦手」の裏には、大きく分けると以下の2つの特性が隠れています。
この2つの苦手さは全く違うところから来ているので、大人が丁寧にお子さんの様子を掴み取ってあげることが大切です。
1.目の動きによる「見え方」の苦手さ
・文字を目で追うことが難しい
・目のピントを合わせるのが難しい
などの苦手さがある場合、つまずきの原因は「目の動かし方」にあります。
目の動かし方、眼球運動につまずきがあると、文字を目で追う「追視」が難しく、
・何度も同じ行を読む
・飛ばし読みをする
といった行動が見られます。
また、目のピントを合わせる機能がうまく働かないと、
・文字がにじんで見える
・二重に見える
といった困難が表れます。文字に限らず、○や△などの形の認知も難しくなります。
2.言葉としてのまとまりを意識することの苦手さ
一つひとつの文字を読んで音にすることができても、それを一つのまとまり、意味のある言葉として理解できていないことがあります。
たとえば「い」「ぬ」と一文字ずつ発音することはできるけれど、それが動物の「いぬ=犬」だと理解しているわけではないので、読み方がたどたどしくなります。
学齢が上がると、物語の文章を読むことができても登場人物の心理までは読み取れない、といった困難も出てくることがあります。
2.書くことが苦手 の背景にある障害特性
書くことが苦手、文字が雑で汚い、といった様子を見せる子は多いものですが、LDの子どもたちの苦手さは独特のもので、何度も繰り返し書く、といった一般的な練習方法ではなかなか改善されません。
そんな苦手さの背景には、大きく分けると3つの特性が隠れています。
1.位置関係の認知の苦手さ
形や大きさのバランスが悪い文字を書く子の場合、見たものの奥行きや、左右・上下の位置関係を認知する力が弱いことがあります。
文字の形や大きさを適切に書くことが難しいため、
・鏡文字を書く
・一つずつの文字の大きさがバラつく
・マスや罫線からはみ出す
といった様子が見られます。
2.手先を使うことの苦手さ
感覚の偏りから、手先が不器用なことも多く、
・筆記用具を正しく持てない
・適度な筆圧を保てない
といった難しさがあり、文字を書くことの苦手さにつながります。
3.一時的に記憶することの苦手さ
何かを一時的に記憶しておく力を「ワーキングメモリ」と呼びます。
この機能に弱さがあると、聞いた話や見た文字を再現することが難しくなります。そのため、
・先生の話を聞き取って書く
・黒板の文字をノートに書き写す
などの作業に困難があり、「書けない」という状態像につながります。
ワーキングメモリの弱さは、聞くこと・話すこと・計算することなどのさまざまな苦手さにもつながり、日常生活のあらゆる場面で小さなつまずきを繰り返すことにもなりかねません。
3.聞くこと・話すことが苦手 の背景にある障害特性
聞くこと・話すことの苦手さにはさまざまな要因が絡み合っていますが、主な理由を切り取って考えてみましょう。
1.必要な音だけを聞き取る苦手さ
クーラーの動作音、窓の外を走る車の音、イスのきしみ、他人の呼吸や咳、、、私たちの周囲には実にさまざまな音が流れています。
これらの音の中から、必要な音(たとえば先生の指示や会話の相手の声など)だけを聞き取り、それ以外の音は上手に無視することができるからこそ、私たちは「聞く」「話す」ことができているのですが、聞く力の弱いLDの子どもたちはここに苦手さが隠れています。
たとえば、注意力が弱い子の場合、聞き漏らしが多くなります。
聴覚過敏がある子の場合、周囲のわずかな雑音が気に障るほど大きく聞こえ、必要な音に意識を向けられません。
全ての音が同じように意識に入ってくる子の場合、かすかな雑音も先生の話も全て同じ音量で聞こえるので、先生の話だけを聞き取ることが難しくなります。
2.音を聞き分けることの苦手さ
似た音や、長音・拗音・促音の聞き分けが難しいと、
・「はち」と「はし」などの似た言葉を聞き分けられない
・長音の聞き落としがある(例:「ひこうき」が「ひこき」になる)
・拗音の聞き落としがある(例:「シャベル」が「アベル」「サベル」「タベル」などになる)
・促音の聞き落としがある(例:「ねっこ」が「ねこ」になる)
などの様子が見られます。
文字の読み書きのスキルは、音を正しく聞き分け、発音することが土台になっています。そのため、うまく聞こえない音は、正しく読み書きすることもできません。
3.考えを頭の中で整理することの苦手さ
・人の話を聞いて理解することはできるけれど、自分が話す番になると言葉が出てこない
・自分の考えをうまく話せない
などの様子を見せる場合、脳内の情報処理能力につまずきがあると考えられ、頭の中で自分の言いたいことを整理して、文章にして口に出すという作業に難しさがあります。
4.計算や推論が苦手 の背景にある障害特性
読み書きの苦手さと同様、計算や推論の苦手さにもさまざまな要因が絡み合っており、これまで述べてきた3つの苦手さとも深い関係があります。 ざっくりと全体を眺めてみましょう。
・数の順序、少数、分数などがわからない
数の基本的な概念が理解できなければ、当然計算もできません。
・ワーキングメモリが弱い
繰り上がりや繰り下がりの数を覚えられず計算や暗算が難しくなります。 指を使った計算からなかなか抜け出せないこともあります。
・図形やグラフの問題が苦手
見て認知する力が弱いと、図形やグラフの問題の形を正しく捉えられません。 手先の不器用さを持っている子の場合は、コンパスや定規で図形を描くことも苦手です。
・証明問題や作文が苦手
事実から結果を予測する、結果から原因を推し量るといった作業を「推論」と呼びます。
この「推論」に苦手さがあると、証明問題や作文などの課題から、日常的なコミュニケーションにもつまずきがちです。
支援のポイント
読むこと、書くこと、聞く・話すこと、計算・推論すること。
学習障害の子どもたちに見られる4つの苦手さと、その背景にある障害特性を見てきました。
これらの4つの苦手さのうち、どれか一つだけが苦手な子もいれば、複数の苦手さを持つ子もいます。
4つの苦手さの特徴を踏まえて、実際には子どもたちにどのように働きかけていけばよいのか、支援のポイントをまとめてみましょう。
<何に困っているか見極める>
学校の先生ならば、算数や国語などの授業場面で。
家庭の保護者ならば、食事や身支度、入浴や着替えなど日常生活のふとした場面で。
子どもたちが困っている様子に気付くタイミングはさまざまでしょう。 ある場面での困り感に気付いたら、ぜひ行っていただきたいのが「それ以外の場面」での様子も含めて見守るということです。
これによって、お子さんがどこに苦手さを感じているか、具体的に見えてきます。
たとえば、教科書を音読する時に、一文字ずつぎこちなく読んでいく様子があれば、
目の動かし方が苦手なのか?
見る力が弱いのか?
言葉のまとまりを意識することが苦手なのか?
などと、いくつかの理由が想像できます。
これらの理由を頭の中に浮かべながら日常生活を見守ってみた時に、遊びの最中にボールを目で追えていない様子があったとしましょう。すると、目でものを追う力が弱いのかもしれない、という仮定が浮かび上がってきます。
このように、お子さんの日常生活を丁寧に見守り、複数の事例から考えることで、お子さんの苦手さを明確に見極めていくことができます。
<子どもの苦手に合わせた工夫を>
苦手さを把握したら、お子さんそれぞれに合わせた支援を工夫していきましょう。
たとえば、見ることが苦手で文章を読めないなら、
・文章にラインを引いて目立たせる
・追視・注視がしやすい教材を作る
などの働きかけが考えられます。
またたとえば、聞き取る力が弱いなら、
・話し手の声に集中できるように注目させてから話す
・短くはっきりした表現で話す
・視覚的に伝える
などの働きかけが考えられます。
言葉の理解力、ワーキングメモリ、手先の器用さ、などに弱さがある場合は、学習や日常生活を含めたさまざまな場面で影響してくるので、根本的にこれらの力の発達を促すような遊びや運動を行うことも大切です。
<叱らずに具体的な方法を提案する>
学習障害の子どもたちは、発達全般に遅れがあるわけではなく、特定の範囲にだけ苦手さが目立つため、
「やればできるのに努力が足りない」
「頑張ればできるはず」
と思われがちです。
周囲がそういう気持ちでいると、ご本人もそうと思い込み、頑張ってもできない自分に落ち込んで、自信もやる気も下がっていきます。
できないものについては、大人が一緒に対応を考えながら、ご本人が物事に対応しやすくなる方法を具体的に伝えていきましょう。
たとえば、ボールを目で追うことができないお子さんに、「ちゃんとボールを見て」と口で言うだけでは不十分です。目を動かす練習をしたり、見る動作を自然に行えるような遊びを行ったりしながら練習していくと良いでしょう。
☆見る動作を自然に行える遊びについて、一例をこちらのブログ記事でご紹介しています。
<自信をつけ、意欲を持たせる工夫を>
子どもたちの心と身体がすこやかに育つためには、苦手な物事にチャレンジして乗り越える、「できた!」という達成感を味わう、という体験が欠かせません。
お子さんの今のレベルに合った課題を用意する、課題を細かく区切って一つできるたびに褒めるなど、大人が意識して成功体験につながるように働きかけましょう。
<保護者、学校、専門家の連携>
お子さんの成長につれて、お子さんの周囲の環境も変わり、お子さん自身が求める支援の質も変わってきます。
家庭と学校とでお子さんの状態を情報交換したり、専門家にアドバイスを受けたりなど、適切なサポートができるよう、常に支援方法を見直していきましょう。
大人が学習障害の子どもたちの能力の偏りに気付くのは、本格的な学習が始まる就学以降が多いようです。
それまでも、○や△などの形の認知ができない、大人の説明がわからないなど、つらい思いをしていることがしばしばあるはずなのですが、苦手な分野以外の学習能力には問題がないため、発見は遅れがちです。
また、学習障害のお子さんには、ADHDや自閉症スペクトラムを併せ持つ方も多く、社会性の困難や不器用さ、集中することの苦手さなどから、学習の困難を一層高めている場合もあります。
「LDだから」「ADHDだから」などと、診断名でお子さんをひとくくりにせず、その子の得意・不得意をよく見つめて、その子に合わせた柔軟なサポートを行いたいですね。
出典・参考情報:発達障害情報・支援センター
他の教材ではすぐにかんしゃく。でも、55レッスンは違いました!
N.K様 6歳1ヵ月 (アメリカ合衆国)
55レッスンは学習障害を持つ子どもへの配慮が本当に素晴らしい教材だと思います。大手の教材をいくつか使ってみたのですが、プリントに描いてあるキャラクターが気になったり、課題が複雑で何をすれば良いかわからずイライラして、すぐにかんしゃくを起こしていました。でも55レッスンなら「一つのプリントに一つの課題」というのが徹底されているので子どもにとってわかりやすいんです。5ヵ月経った今では、自分から「study time!」と言って楽しそうに取り組み、机に向かうことが習慣になっているのが嬉しいです。
最近しりとりができるようになりました。「ん」がついて終わるのがおもしろいらしく、3回位で終わってしまいますが、以前はしりとりの意味もつかめていなかったので、嬉しいです。
学校でやったのだと思うのですが、ある日、自分で物語のようなものを作って、ホチキスで留めた「本」を何冊も作りました。単に絵と簡単な単語だけなのですが、子どもの新しい能力に驚かされました。
今までなかなか覚えられなかったカタカナは
全て覚えて、パッと書けるように。
日々の繰り返しが大切だと実感しました。
M.M様 9歳11ヵ月 (東京都)
学校の宿題よりまず「四谷学院の55レッスンをやる」と言って積極的に取り組んでいます。学校では2 年生の内容を学習していて、55レッスンでは1年生の内容を学習しています。一度学校でやったことなので間違えずにやれること、プリント1枚の問題が少なくすぐ終わることでやる気が出るようです。今までなかなか覚えられなかったカタカナは、全て覚えて、パッと書けるようになりました。やはり毎日少しずつでも繰り返し学習していくことは大切なんだなと改めて実感しました。この調子で、これからも楽しく継続して学習できればよいなと思っています。
お子様にぴったりの段階がわかる無料の判定テストです(指導書、カードのサンプルつき)。
さらに、資料のご請求をされた方には「55レッスン 講座紹介動画」もご視聴いただけます。
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